思い出のオーデマ ピゲと、出会いを引き寄せるフランク ミュラー、ロレックス……
製造時に名入れを施した貴重なオーデマ ピゲ
ある意味、理想的すぎる時計環境にて育った丹下さん。 その“理想的”のひとつが、お父様から譲り受けたオーデマ ピゲの一本。ユニークな造形美が目を引くドレスウォッチです。
「このバンブーは、父の形見分けとなるもの。ケースとブレスレットが一体デザインであり、非常に洒落た雰囲気を持っています。 ポイントは文字盤に父の名が入っているところ。カスタムではなく製造時に名が入るよう、シンシアからオーデマ ピゲにオーダーを入れていただいた一本です。
「現在、このバンブーは特別なシーンでしか身に付けていません。重要なコンペやプレゼンの時などに使っています。父親と一緒に乗り越えたいという場合の一種のお守りとして大事にしています。 ただし、現在は電池切れにて不動。いつでも出掛けられるよう、電池を替えておくべきですね(笑)」
これも世界に一本だけのフランク ミュラー
そして、少し“変わり種”ということで特別に見せていただいた一本が、フランク ミュラーのトノー型パーペチュアルカレンダー。デコラティブな造形美を放つモデルですが、こんな一本、今まで見たことあるような、ないような……。
「これは冨田真一さんという日本の彫金師にお願いをして、アートワークを彫り込んでもらった一本です。 当初は冨田さんの作風が分からなかったので、他の時計からカスタムをお願いしました。実際に仕上がってみたら非常に繊細で美しい彫り込みにすぐ惚れ込んでしまい(笑)。 これなら大事にしていたパーペチュアルカレンダーも任せたい! と、お願いしたのです。彫金ケースはそれまでにもいろいろ拝見しましたが、冨田さんの彫り込みは緻密で彫り自体が深い。たまにプリントのように浅い彫り込みのものも見掛けますが、僕はこれぐらい深いほうが好み。 冨田さんはステンレスなど硬い素材を彫るのも得意とのことで、非常に美しく陰影あるアートワークを巧みに彫り込んでくれました」
彫金の仕上がりにいたく感銘を受けた丹下さん。そこでこのパーペチュアルカレンダーを、ある人物にわざわざ見せに行ったと言います。 「それが、この時計を作ったフランク・ミュラー本人(笑)。ちょっと彼を驚かせたいと思い、ある時黙って彼のところまで見せに行きました。 そしたら非常に気に入ったらしく、“コレは実にいいね!”ととても喜んでくれました。僕とフランク・ミュラーは昔から交友があって、どうしても見せたくなったのです(笑)」