味軽やかな宇都宮ワイン、販売開始 会社辞め就農、市内で醸造
宇都宮市郊外にある「Hinoe(ヒノエ)ワイナリー」が、市内で自家栽培するブドウで醸造したワインの販売を始めた。山梨県甲州市など他の産地に比べ寒暖差が穏やかなため色が薄く、軽やかな味だとしている。会社員を辞めて就農し、醸造に乗り出した吉村潔(よしむら・きよし)さん(46)は「1本飲んでも飽きず、料理に合うワインを目指した」と意気込む。 ワイン好きの吉村さんは宇都宮市出身。東京のIT企業に勤務していた2009年、「宇都宮で自分にしかできないことをしたい」と思い、退社した。市内にワイナリーがないことを知り、ワイン造りに取り組むことを決めた。 ただ、土地もなく、農家の知り合いもいない。土地探しから始めた。ようやく貸してくれる人が見つかったが、ブドウ栽培は渋られた。というのも、ブドウなどの樹木を残し、原状回復しないまま土地を返却する事例があるからだという。 吉村さんはシイタケや野菜の栽培で生計を立てつつ、土地所有者の理解を得た。ところがブドウ栽培を始めようとした2012年、国内で苗木の買い占めが起こった。国税庁が定めた基準により「日本ワイン」として販売できるのは国内で収穫されたブドウのみを使用したものと規定されたためだ。
吉村さんは2015年、やっとの思いで50本を入手。甲州市の「Nikkawa(ニッカワ)ワイナリー」からノウハウを教わって苗木の買い付けを増やし、2018年には2500本に。2019年、収穫したブドウでの醸造を別のワイナリーに委託し、宇都宮市内の飲食店向けに販売を始めた。 さらに2023年2月、酒類製造免許を取得し、8月から自家醸造を開始。今年3月9日に、7種類のワインの販売にこぎつけた。吉村さんによると、市内で醸造するワイナリーは初めてだという。この間に結婚した妻の慎子(のりこ)さん(44)と共に切り盛りする吉村さんは「やっとスタートラインに立てた。多くの人に宇都宮産を飲んでもらいたい」と語る。ワインは店舗の他、自社サイトでも購入できる。