トランプ2.0の誕生を前にBRICSに駆け込む新興・途上国、グローバルサウスのBRICSシフトはなぜ加速している?
■ 西側寄りの国々もBRICSに駆け込む理由 BRICSは、南アの加盟以来加盟国は5カ国であったが、2024年1月には、イラン、エジプト、UAE(アラブ首長国連邦)、エチオピアが新たに加盟した。 また、2024年10月にロシア・カザンで開催された首脳会議では、アジアやアフリカから36カ国が拡大会合に参加。トルコ、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム、UAE、イラン、ベラルーシなど13カ国が、新たに創設されたパートナー国になった。 冒頭で登場した環境コンサルタントの母国ナイジェリアも、パートナー国の一つである。 反西側が鮮明なイランやベラルーシはともかく、トルコ、UAEやタイ、マレーシア、インドネシアといった、一般には西側寄りと捉えられている国も加盟又はパートナーになっていることに驚きを隠せない人も多いのではないか。 トルコは西側軍事同盟のNATO(北大西洋条約機構)加盟国だが、ロシアへの経済制裁には参加していない。ロシアと西側をつなぐことで、自国の影響力を高めようとしている。タイは、最大の貿易相手国である中国との経済関係強化などを目的に参加していると言われる。 ロシアのプーチン大統領によると、30カ国以上がBRICSへの加盟を希望しているという。 今後、グローバルサウスのBRICSシフトは加速する可能性が高い。その理由は以下の通りだ。
■ リスクヘッジの期待を集めるBRICS経済圏 第一に、貿易や投資といった経済関係の拡大である。 世界経済におけるBIRCS諸国のGDP比率は拡大を続けている。IMF(国際通貨基金)によると、物価水準なども考慮に入れた購買力平価ベースで見た場合、すでにG7を上回っている。今後の成長率も、G7を上回り差が拡大することであろう。 BRICSは人口増加率が高い国が多く、今後、世界経済における役割が拡大することは間違いない。経済的魅力があるBRICSに加盟・参画して、経済成長をとげたいと考える国が増えることは自明の理とも言える。 第二に、分断された世界経済におけるリスク分散だ。 BRICSは、SWIFT(国際銀行間通信協会)に代わる国際決済システム構築によって世界経済からの脱出を目指している。既に構築されているBRICSペイの仕組みを使って、BRICS内部で自国通貨での支払いや受け取りができる仕組みができている。 ウクライナ侵攻の制裁としてロシアに科されたSWIFT禁止や米国の高関税など対中強硬路線は、西側の世界経済システムに依存しすぎることのリスクを提示している。グローバルサウスは、リスクヘッジとしてBRICSによって構築される第二の世界経済システムに期待している。 さらに、新たなBRICS通貨の創設も検討されている。既にG7よりもGDPが大きくなっているBRICSが結束すれば、新通貨が国際金融における基軸的な通貨の一つになることも夢ではなくなるであろう。