400万のベンチ、伐採…100億超の「玉川上水緑道」再整備計画「渋谷区長の私物化が止まらない?」
緑地開発の経験もないのに…不明確なキャスティング理由
そうした「お友だち」として堀切区議が目を光らせている一人が、400万円のベンチを含む緑道再整備計画のデザインを手掛ける田根剛氏だ。 「令和2年度に5000万円、令和3年度1000万円、令和3年度末5400万円、令和4年度1億5800万、令和5年度2億9000万円、令和6年度2億780万円の合計7億6980万円と、非常に大きな額が入札も経ずに再委託という迂回をして、田根剛氏個人の会社へ渡っていることが情報開示請求によってわかりました」 田根氏といえば、2020東京オリンピック招致に向けた国立競技場基本構想デザイン競技で「古墳スタジアム」がファイナリストに選ばれた、フランス・パリ在住の建築家。しかし、堀切区議はその「実績」に疑問を呈する。 「田根剛氏は一級建築士の資格はとっていなくて、ライセンスをデンマークでとったという人なんですね(「designstories」Presented by 自分流×帝京大学 辻仁成氏のインタビューより)。 これはラインや構造計算などフルパッケージでできないといけない日本の建築士とは別で、ある種デザイナーみたいなもののようです。 『エストニア国立博物館』のコンペで最優秀賞というのも、コラボチームによるもので、個人の受賞じゃない。 私は学生時代にパリに住んで芸術学部で写真を勉強していた関係から、パリの建築系の知り合いにいろいろ聞いてみましたが、パリでの知名度は全くありませんでした。 また、フランス、エストニア、フィンランドで田根さんの建築物を全部見てまわりましたが、工務店ぐらいの仕事ばかりで、おまけに緑地開発などは全く手掛けていないんですよね」(堀切区議) ではなぜ田根氏に白羽の矢が立ったのか。堀切区議は裁判を起こして取り寄せた300頁もの情報開示資料をもとに、こんな推論を立てる。 「チームで受賞したエストニア国立博物館の実績によって、’17年に芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞し、小池百合子都知事の東京都未来ヴィジョン懇談会のメンバーに選ばれているんです。 同じメンバーに長谷部渋谷区長もいました。そこから長谷部区長は’19年に代々木公園内にサッカースタジアムを作る計画を始めたのですが、その設計を外郭団体を使って依頼されたのが田根さんでした。 しかし、コロナ禍で計画はとん挫し、小池都知事が芝にしてしまい、工事が止まってしまったんですね。 しかし、田根さんにはある程度お金を払う約束をしていたのではないか。実際、このプロジェクトはとん挫した一方、まだ何も始まっていない頃から田根氏にお金が支払われ続けています」(堀切区議) では、渋谷区はどのように田根氏に依頼したのか。 「令和3年4月に、渋谷区は東京ランドスケープデザインという会社に入札を通さず、プロポーザル契約という形式で設計委託契約費として合計1億1846万6000円を支出しています。 しかし、なぜか再委託を受けたのは渋谷区外郭団体の東京ランドスケープデザインでコンサルタントをしている2人の人物。 田根氏もまた、東京ランドスケープからの委託を受けた形になっています」(堀切区議) さらに、緑道再整備イベント「388FARM β」として博報堂と三井物産が共同で開発・運営する「shibuya good pass」なるサービスの実証実験も行われている。 「これは渋谷の中で畑を作り、みんなでそれを耕し、それを近隣のレストランで食べるという計画で、そこに緑道が使われる予定のようなのです」(堀切区議) そこで、「なぜデザイン性のあるベンチにしなければいけないのか」「31本の木が伐採された理由」「緑道再整備計画のデザインを、なぜ田根剛氏に打診したのか」について、渋谷区緑道・道路構造物計画課調整係に問い合わせたが、残念ながら期日までに返答は得られなかった。 他にも堀切氏が指摘する謎の事業と、そこに関わる「お友だち」は数限りなくある。しかも、いずれにも意味不明の名前が冠してあり、その内容や関わり等の全貌を把握するのは至難の業だ。 現時点で110億円とされている緑道整備計画は、どこまで膨らんでしまうのか。そのうちの何割が本当に必要なものなのか。少なくとも税金を支払う渋谷区民は注視していく必要があるのではないだろうか。 取材・文:田幸和歌子
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