<ライブレポート>和楽器バンドが届けた“ありったけの感謝の思い” 再会の約束を胸に和洋折衷のステージで観客を圧倒
和楽器バンドの全国ツアー【和楽器バンド Japan Tour 2024 THANKS ~八奏ノ音~】が、12月10日の東京ガーデンシアターで終幕を迎えた。今年デビュー10周年を迎えた和楽器バンドだが、1月に無期限のバンド活動休止を発表。このツアーをもって、バンドとしての活動を一旦止めることとなる。8人のメンバーたちは10月にリリースされたベストアルバム『ALL TIME BEST ALBUM THANKS ~八奏ノ音~』を携え、まさにそのタイトルどおりにファンへの感謝を伝えるべく、10年間の集大成となるようなステージを展開した。 その他の画像 オープニングSE「Overture~八奏ノ音~」に乗せてメンバーがひとり、またひとりと登場すると、会場は早くも大きな盛り上がりを見せる。メンバーが所定の位置につくと、箏の音色と和太鼓の力強いリズムとともに「六兆年と一夜物語(Re-Recording)」でライブはスタート。激しさを伴うアレンジながらも、各楽器の個性をしっかり感じ取ることができるアンサンブルで観る者を魅了する。活動休止前最後のライブとあってか、メンバーの表情からはこのステージにかける真剣さが感じ取れた。 1曲終えると鈴華ゆう子(Vo.)が「今日は10周年の集大成。ここにいるみんなでひとつになろう。ついてこい!」と叫び、そのまま「Valkyrie-戦乙女-」へなだれ込む。この頃になると、メンバーの表情も和らいでいき、このステージを存分に楽しもうとする姿勢が伝わる。続く「生命のアリア」では緩急に富んだ演奏とエモーショナルな歌声で、客席の熱を徐々に高めていった。 最初のMCでは、鈴華が「今日はみんなにとっても特別な日だと思いますし、私たちにとっても特別な日になると思います。みんなで作り上げるこの日に立ち会ってくださってありがとう」と挨拶。続けて「今日は大忘年会のような気持ちで盛り上がっていきたいと思います」と告げると、穏やかな「Starlight (I vs I ver.)」でライブを再開する。「月下美人」では観客にスマホのライトを点灯することを促し、会場がまばゆい光で包まれる場面も。ドラマチックなサウンドと相まって、幻想的な空気が作り上げられた。 ライブ中盤には、各メンバーの個性をフィーチャーしたインストパートも用意。町屋(Gt. & Vo.)が煌びやかなアルペジオに続いてパーカッシブなプレイを叩き込むと、そこに黒流(和太鼓)が担ぎ太鼓で、鈴華が剣舞で加わり独創的な世界を構築。途中、いぶくろ聖志(箏)も手持ちの白鷺(いぶくろ監修の文化箏)でセッションに参加すると、和楽器バンドならではの異種格闘技的バトルが展開された。また、町屋や亜沙(Ba.)、山葵(Dr.)がダイナミックなメタルサウンドで観客を圧倒させたかと思えば、そこに神永大輔(尺八)や蜷川べに(津軽三味線)も加わりドラマチックさが加速。見応えのあるセッションの数々で、観る者を大いに楽しませた。 以降もオーディエンスのスマホ撮影タイムを用意した「The Beast」、鈴華と町屋のツインボーカルを生かした「Perfect Blue」や「シンクロニシティ」「チルドレンレコード」といった楽曲を連発。さらに「吉原ラメント」や「細雪 (Re-Recording)」と振り幅の大きな選曲で、観客を濃厚な世界へと誘い続ける。ボカロ曲やバンドのオリジナル曲を織り混ぜたセットリストは、まさに和楽器バンドのキャリアを総括するような内容。鈴華は「みんなが大好きだというリクエスト曲をもとに、セットリストを組み立ててきました。和楽器バンドにはすごくロックな曲もあれば雅なバラードもあるけど、どんな曲をやっても和楽器バンドになってしまう。音はこれからもずっと残っていくので、皆さんが好きな曲をこれからもたくさん聴いて、歌ってほしい」と観客に伝え、バンド初のオリジナル曲「華火 (Re-Recording)」を、華やかさと刹那さを感じさせる歌とバンドサウンドで届けた。 終盤になると、ライブ恒例となった黒流&山葵によるドラム和太鼓バトルに突入。黒流が「今日は10年で一番の掛け声にしたいと思います」と煽ると、オーディエンスもこれに応えるように、2人の繰り出すビートに合わせて盛大な歓声を上げる。そして、三三七拍子のリズムに乗せて「起死回生 (Re-Recording)」が始まると、ライブは一気に佳境へ。「雪影ぼうし」では観客がタオルを頭上でくるくる回し、一体感を高めていく。そして、バンドの集大成的な1曲「八奏絵巻」を経て、彼らの代名詞的ナンバー「千本桜 (Re-Recording)」でライブはクライマックスを迎えた。 観客が歌う「暁ノ糸」に導かれるように、ステージに再登場したメンバー。この日は活動休止前最後のライブということもあり、ひとりずつ今の気持ちを伝えていく。それぞれ異口同音に「今も(活動休止の)実感がない」「このバンドをやって本当によかった」「出会ってくれてありがとう」と伝える中、亜沙の「俺たちはこの8人で一人前。足りないものがあるから、寄り添ってバンドで戦えた」という言葉に対して、鈴華が「8人揃って一人前だったからこそ、たくさんの奇跡を生み出してきた。世の中にはたくさんの音楽が溢れているのに、その中から和楽器バンドを見つけてくれて、そして好きになってくれてありがとうございます。私たちはこれからも必死にもがいて、この音楽の世界で生きていくと思いますので、変わらず応援をよろしくお願いします」と続ける。そして、最後にありったけの感謝の思いを詰め込んだ1曲「GIFT」を観客にプレゼント。終わりではなく再会を約束するこの曲で、会場は笑顔と涙に包まれてエンディングを迎えた。 今は寂しさで胸がいっぱいかもしれないが、最後に鈴華が発した「この今日の光景がこれからの人生を支え続けると思います」の言葉のように、これまで我々が目にしてきた奇跡の瞬間の数々を反芻しながら、再び8人が揃って和楽器バンドとして動き出すその日を待ちたい。 Text by 西廣智一 Photos by KEIKO TANABE、上溝恭香 ◎セットリスト 【和楽器バンド Japan Tour 2024 THANKS ~八奏ノ音~】 ※2024年12月10日(火)東京ガーデンシアター公演 1. Overture~八奏ノ音~ 2. 六兆年と一夜物語 (Re-Recording) 3. Valkyrie-戦乙女- 4. 生命のアリア 5. 雨のち感情論 (Re-Recording) 6. Starlight (I vs I ver.) 7. 地球最後の告白を 8. 月下美人 9. 遠野物語九四 10. 遠野物語五五 11. 知恵の果実 12. 焔 13. The Beast 14. Perfect Blue 15. シンクロニシティ 16. チルドレンレコード 17. 吉原ラメント 18. 細雪 (Re-Recording) 19. 華火 (Re-Recording) 20. 情景エフェクター 21. ドラム和太鼓バトル~幾千ノ音魂~ 22. 起死回生 (Re-Recording) 23. 雪影ぼうし 24. 八奏絵巻 25. 千本桜 (Re-Recording) <アンコール> 1. 暁ノ糸 2. 星月夜 3. GIFT