「頑張れ、頑張れ」って言う世の中がしんどい――元引きこもり・「あの」が考える「多様性」と絶望の越え方
さらに「頑張る」ことを美徳とする世間の風潮へのアンチテーゼも口にする。 「なんか『頑張れ、頑張れ』って言う世の中がしんどい。『頑張んなくたって、生きてりゃ十分じゃん』とか思っちゃうし。引きこもっている子たちには、『別に変わる必要もないよ』っていうのが本音。自分が頑張りたいって思ったら頑張ればいいし、それも全部自分で決めろ、って思う」
一人が一番楽だし、合ってる
旧知の記者に「昔から知ってると思うけど、ずっとこうだから」と語るあのは、たしかにデビュー当時からスタンスが変わっていない。 「テレビには出てるけど、何か作戦を練るとかも、キャラを変えるとか、繕うことも一切しないし。『事務所の方針なの? そのキャラ』とか、最近になって言われるんですけど、何かを変えるとかは、一番嫌だと思ってるので」
同世代の女性からの高い支持も理由がわからないと言う。「女の子の支持が欲しくて活動してるわけでもないし」と、本当に不思議そうだ。自分自身をめぐる環境の変化に一番驚いているのは、あの本人だろう。 「しゃべれなかったし、引きこもってた時期からしたら、ほんとに予想外です。今も全然しゃべれないけど。暗すぎる人間だったので、そんな人がテレビに出たり音楽をやったりしてて、『いいのかな?』とか思ったりもします、今でも。でも、客観的にテレビを見て、『自分にしては頑張って笑ってるな』って感じがします。やっぱり普段が超暗いから」
その注目度の高さゆえに、友達が増えたというが、そこにもまた苦しみが生まれるという。 「誰とも関わりたくない。これは心の底から思っちゃうんです。すてきな人ともたくさん出会って、別に縁切りたいとか思わないけど、一人が一番楽だし、合ってるなって思います。誰とも意思疎通ができないし、プライベートな人間関係で、自分のままでいれる場所がないから。それをなんか飄々と、その場のノリで流せないから、誰とも関わりたくない。自分の性格がかなり気分屋だから、それで振り回されるような方々が相手だと、厳しいだろうなっていうのはある。別に誰かを変えさせてまで友達でいたいとは思わないから、『だったら一人でいたほうが良くない?』って思う」