「月に1冊も本を読まない」6割…どの世代でも進む“読書離れ”
教育現場からは、SNSの普及によって、長い文章を読む能力が著しく落ちているということも聞きます。調査では、インターネットで記事などを毎日読む人は75%いることから、必ずしも活字離れが急激に進行しているわけではない、ということは言えるのですが、情報の質の問題はとりあえずおいておくとしても、ネット上の記事は短文で、量の問題でも本や新聞に比べて少ないですから、やはり読書が長文の読解力には必要といえます。 この点について、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」という新書の著者で文芸評論家の三宅香帆さんは、毎日新聞で「読書離れの原因は、日本人の『長文離れ』というべき現象、つまり長文を読めなくなっている人が増えているため」と推測し、さらにその原因を「SNS特有の、文脈のない細切れの短文に慣れたため」としていました。 それでも、私は少し光を感じています。いま、毎日新聞出版が出している三笠宮彬子さまの「京都ものがたりの道」という本がちょっとしたブームになっているのですが、特に彬子さまがテレビに出演し、自らの体験と本の内容について自然な語り口で話されたところ、番組終了後にどっと売れたのです。魅力ある著者がいて、本について説得力ある言葉が届けば、本を手に取ってくれるということがよく分かりました。 まずは読者が手に取ってくれるような魅力ある本を出版し、それを届ける努力をすることが第一で、並行して本と人をつなげるための取り組みを進めていくことが必要です。業界で、また社内でも議論しながら、5年後の国語世論調査で「月に1冊も本を読まない人」のパーセンテージが下がっている状況を作っていきたいと思います。 ■◎山本修司(やまもと・しゅうじ) 1962年大分県別府市出身。86年に毎日新聞入社。東京本社社会部長・西部本社編集局長を経て、19年にはオリンピック・パラリンピック室長に就任。22年から西部本社代表、24年から毎日新聞出版・代表取締役社長。
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