【大学トレンド】国公立大で広がる年内入試、筑波大は入学者3割が「特別選抜」
改革は「不安がある」 だからこそ「サポート」を
今、筑波大学が目指すのが「学士課程の国際化」です。25年度に全学生の5%、40年度には20%の留学生を受け入れることを目標としています。「大学院では海外のトップ大学と同レベルの国際化が実現していますが、学群での割合を改善したい」と学長特別補佐の清水諭教授は語ります。 「これまで私費外国人留学生入試や帰国生徒特別入試等では国籍を指定していましたが、日系の方や、国内のインターナショナルスクールで学んできた人たちも受け入れられるように、国籍にとらわれることなく、各入試の趣旨に沿った本人の学修歴及び学力等による出願資格を設定しました。日本で学びたいという人たちのニーズは近年とくに上昇しており、各入試の定員も調整を始めています」 最新の入試状況からも、清水教授の言葉通り、グローバル選抜に高い人気が集まっていることがわかります。2023年度は「地球規模課題学位プログラム(学士)入試」では若干名の募集に対し56人が、「総合理工学位プログラム(学士)入試」では5人の枠に111人が志願しました。志願者は年々増加しています。 留学生の受け入れによってキャンパスの国際化が進めば、互いの個性をより尊重するインクルーシブ(包括的)な文化が醸成されていくはずです。 「近年取りざたされる若者の内向き志向も、国際競争力の低下につながっているのではないでしょうか。日本人の学生が『自分も世界とつながっている』と感じられるグローバルなキャンパスをつくることで、世界にはばたく人を育成したいと考えています」(加藤副学長) 多様な選抜方法は、例えばスポーツに取り組んできた志願者を対象にした体育専門学群の推薦入試にも見られます。その結果が、オリンピック・パラリンピックのメダリストを100人以上生み出した実績にもつながっているのでしょう。ただし、高校時代に単にスポーツで優秀な成績を残してきたというだけでは評価されない、と清水教授は説明します。 「重要なのは、自分でどう課題を見つけ、どんな工夫をしてきたかということです。推薦入試などの特別選抜では、スポーツでも歴史でもITの分野でも、30分の面接で受験者にじっくり語ってもらいます。中には卒論レベルのレポートを用意する受験者も少なくありません。入試に取り組むことによって、受験者自身がもっているポテンシャルを覚醒させたいという狙いもあります」 先進的な入試改革を続けることについて、加藤副学長は「大学側にも不安はある」と率直に語ります。しかし、だからこそきめ細かなサポートにも注力しており、それが学生や教員の絆を強めることにもつながっていると言います。