【大学トレンド】国公立大で広がる年内入試、筑波大は入学者3割が「特別選抜」
総合型選抜や学校推薦型選抜を総称した「年内入試」による大学入学者数は増え続けており、すでに大学全体の過半数に達しています。国立大学ではまだ一般選抜が優勢ですが、推薦入試などの「特別選抜」による入学者が3割を超えるのが筑波大学です。同大ではどのような入試改革を行っているのでしょうか。 【データ】「特別選抜」が3割 筑波大学の入試実施状況
筑波大学は20年以上前からさまざまな選抜方法を取り入れており、入試の多様性は国立大学の中で群を抜いています。理事を務める加藤光保副学長は、大学の成り立ちにその理由があると語ります。 「受験戦争が過熱していた1973年に、筑波大学は唯一無二の『新構想大学*』として設置されました。開学時から学際的な学びや一人ひとりの個性を重視しており、多様な学生に来てほしいという思いが強くあります」 *それまでとは異なる組織体制などを盛り込んだ、新しい構想による国立大学のこと 象徴的なのが、2021年度入試から導入した「個別学力検査等(総合選抜)」です。この選抜方法ではまず、志願者は「文系」「理系Ⅰ/Ⅱ/Ⅲ」の4つから自分に合った区分を選んで受験します。さらに入学後の1年間は総合学域群に所属して専攻を絞らずに幅広い分野を学び、1年次の終わりに本人の希望と入学後の成績などに基づいて2年次以降に所属する学類・専門学群を決定します。アドミッションセンター長の大谷奨教授は、「この仕組みの導入は、とても大きな改革でした」と振り返ります。 「総合学域群を選んだ学生たちは入学後も非常に熱心に学び、自らの進む方向を1年かけて決めていきます。転学群・転学類ができることも本学の特徴のひとつですが、総合学域群では、文系区分で入学した学生が理系の学類へ移行する例もあります」 筑波大学では、ほかにもアドミッションセンター入試や複数のグローバル選抜など、多様な入試方法を設けています。こうした特別選抜を経た学生には、ある共通点があると言います。 「彼らは大学合格をゴールにしていません。推薦入試に合格するのは、一般選抜を受験しても合格できる実力がある人たちです。入学後の成績も良好で、積極的に活動してくれていることが、多角的な追跡調査でわかっています。さまざまな入試方法によって、多様な個性を備える優れた学生を選抜できているという自信があります」(大谷教授) 保護者世代の大学受験では、「推薦は一般入試に比べて楽」という風潮があったかもしれません。しかし、筑波大学の特別選抜をはじめ、現在の総合型選抜や学校推薦型選抜は大学によって決して楽に合格できるものではなく、学びへの姿勢が問われる入試といえそうです。