文化遺産保護や防災テーマに清水寺など世界遺産視察
「文化遺産と危機管理」国際研修
文化遺産保護や防災テーマに清水寺など世界遺産視察 撮影:北代靖典
ユネスコが世界で唯一認定した、文化財保護・防災研修である立命館大学「文化遺産と危機管理」国際研修が開催されている。清水寺など主に京都で行われ、自然災害などから文化遺産を保護していこうという世界的な事業の一環としている。 阪神淡路大震災・20回目の1.17「10年+10年」としての20年
歴史都市の文化遺産防災がテーマのプログラム
歴史都市の文化遺産防災をテーマとした国際研修プログラム「文化遺産と危機管理」。今年で11回目となり、受講生はその分野の専門家たち15人で、参加国はペルー、チリ、メキシコ、パナマ、ケニア、モロッコ、インド、スペインなど15か国にのぼる。 同研究所でのオリエンテーションをはじめ、清水寺の世界遺産、先斗町の景観整備地区の視察。1994年に「古都京都の文化財」としてユネスコの世界文化遺産に登録された「仁和寺」も視察し、さらに阪神淡路大震災の被災地である神戸市、兵庫県篠山市の篠山重要伝統的建造物群保存地区の視察なども行う。
国境を越えた知識の交換を促すことが目的
「2006年にユネスコ本部から文化財保護・防災の分野で世界唯一となっている『ユネスコ・チェア』プログラムの認定を受けた国際研修事業です。今回の研修は、2015年に仙台で開催された国連防災世界会議において問題提起のあった『気候変動に起因する災害からの文化遺産の保護』をテーマに開催されました」(立命館大学) 文化財保護や防災にかかわる専門家による講義やフィールドワークを終え、研修の最後にはそれぞれが自国の文化遺産についての危機管理計画を作成し、25日に発表する予定だという。 なお、ユネスコ・チェアプログラムとは、ユネスコの事業の一環で、高等教育機関における教育・研究活動を大学間のネットワークの中で推進し、国境を越えた知識の交換を促すことを目的とするプログラムだという。
清水寺の防災の在り方などを視察
清水寺の円通殿で行われた専門家による講義では、「今、建物の柱の関係が傷んでいる。それで伝統的な工事、修理を行っている。9つの建物を修理していこうという計画です。清水寺は1000年以上、この地にあるんですけど、本堂だけでも10回は焼けてると思います。関西では阪神淡路の地震がありました。このような大きな地震の時にどうするのか、ということです。今、奥の院の建物本体を修理中で、地震の揺れを計算して補強していています。建物の修理だけでなく、防災まで考えています」などと通訳を交えての説明があった。 そのあと、清水寺で実際にどういう修理や防災を実施しているのか、場所を移動しながらの視察となり、研修参加者らは熱心に聞き入っていた。 世界には1000を超える世界遺産がある。観光客誘致においても重要な役割を果たしているが、一方で、地震や風雨などの自然災害からの保全活動は充分とは言えない。中でも、アジア太平洋地域では数多くの自然災害が発生しており、対策が急務であり、このような取り組みは重要だろう。 (文責/フリーライター・北代靖典)