【動画】がん撲滅、亡き仲間への思い胸に合唱団が初演奏会実施へ。収益一部をがんセンターに寄付/大阪
がん撲滅、そして亡くなった仲間への思いよ届け―。大阪のラジオ番組の企画で集まったリスナーを中心とした合唱団が「がん撲滅」の思いを胸に立ち上がった。イベントで「第九」を歌って間もなく団員仲間2人をがんで失ったが、指導者の音楽家が「集まって悲しむだけじゃなく『第九』を歌おう」と呼びかけ自主的に合唱団を立ち上げ練習を積み重ねた結果、11日に初めて大阪市内のホールでモーツァルトのレクイエムを歌う「チャリティ演奏会」を開くことになった。収益の一部は国立がん研究センターへ寄付するという。団員らは本番に向け、日々練習に励んでいる。
多くの団員をまとめてくれた女優、牧野エミさんら仲間への思い
この合唱団の基は、大阪のABC朝日放送ラジオの番組「ドッキリ!ハッキリ!三代澤康司です」でクラシック音楽のイベントの際に合唱団メンバーをリスナーから募集。多数の応募の中から選ばれたリスナーと番組出演者混合の65人が練習を積み重ね、本格的なホールで「第九」を歌ったことだった。 「メンバー65人は経験者、未経験者もおり、まとまりが大変だった」と話すのはメンバーの杉本幸枝さん(43)。だが、それを笑いや独特の明るさでまとめてくれたのが、当時、同番組のアシスタントを務め合唱団にも参加していた、女優の牧野エミさんだったという。 「牧野さんはいつも笑顔で合唱団を盛り上げてくれました。当時、合唱団には経験者 未経験者の『わだかまり』があったんですが、牧野さんが笑いを交えながら太鼓持ちをしてくれて」と杉本さんは続ける。 2012年9月15日に行われた本番では「ザ・シンフォニーホール」(大阪市北区)でメンバーが一致団結し「第九」を歌いあげた。その時の充実感は計り知れないものだったという。だが、その約2カ月後の11月17日、牧野さんは肝臓がんのために53歳で亡くなった。突然の訃報だった。
仲間2人をがんで失う「第九を歌おう」と新たな合唱団立ち上げ
牧野さんは乳がんを患い、同番組内で、がん細胞が肝臓など数個所に転移したことを告白。また、ピンクリボン運動などにも積極的に参加し、早期発見・早期検診などを広く呼びかけていた。そんな牧野さんの早すぎる死に、団員らは悲しみにくれた。 2013年春には、メンバーの兵庫県在住40代女性も、がんでこの世を去った。杉本さんは「後からご親族に聞いた話しですが、彼女は同じように、がんを患う牧野さんが出るから参加を決め、この合唱団での姿を家族にみせる『最後の晴れ舞台』と決めていたらしいんです。私たちには一切病気のことを告げませんでした。気を遣っておられたと思います」と当時を振り返る。 仲間2人をがんで失い「もう辛くて『第九』を歌えない」。メンバーの誰もがそう思った時、合唱団を指導していた音楽家の中村貴志さん(39)が「いつまでも集まって悲しむのではなく『第九』を歌おう」と呼びかけ、1年後にホールで歌を披露するという目標を掲げ、番組ではなく自主的な合唱団「ルークス スペイ」が立ち上がった。