「マイナカードは?」と聞いたら患者にカード投げつけられ… 混乱する医療現場 マイナ保険証の利用「ゴリ押し」キャンペーンの波紋(後編)
■厚労省が各医療機関に「圧」をかける
(Q:先日、かかりつけ医との雑談の中で、医師が「毎月、厚労省からマイナ保険証の利用率についてメールが送られてくるのだけど、今月は何パーセントだ、先月より下がったとか、細かく書いてあって、嫌な気分になるんだよね」と言っていたのですが・・) 厚労省は毎月、各医療機関宛に圧力をかけるようなメールを送っています。オンライン資格確認を義務化させ、全国20万件の医療機関にアカウントの登録をさせました、そこに一斉にメールを送っているのです。細かいことに、各病院や薬局の成績(マイナ保険証利用率)が、それぞれのメールに表示されるのです。 保団連の理事も、「このメールがくると、あなたはできない人です、とダメ出しされているような気持ちになって嫌になる」と言っていました。
■利用促進に「協力する」は34パーセント
6月6日、大阪府保険医協会が「マイナ保険証に関するアンケート」の結果概要を発表しました。247の医療機関からの回答結果によると、「マイナ保険証利用促進集中取組月間」に協力すると答えた医療機関は、83件、34パーセントでした。 しかも、協力すると答えた83機関の内、(協力は)義務だと思っていた機関が22件。さらに、協力すると答えた人の意見も、「利用促進はいいが、やり方が強引すぎる。もっと現場の声を聞くべき」といった厳しいものが見られました。 このマイナ保険証利用促進キャンペーンへの協力は、「お願い」であって、義務ではありません。厚労省は「医療機関がキャンペーンに協力する法令上の義務はない」と言っているのですが、多くの医師が義務だと勘違いしてしまうような形で、医療機関への要請がなされているのです。 また、「協力は考えていない」と回答した人たちの意見として ・不具合が多く、今の状態では患者に対し推進できない ・医師、事務、患者の多くが利便性を感じていない ・マイナンバーカードは紛失の危険があるので常時携帯できない と言った声が上がっています。 われわれは、デジタル化に反対した訳ではありません。使ってみたら不具合が多く、なかなか解消されないので、それなら従来の保険証で良いのでは、という状態なのです。 本来、医療というのは、医師と患者の信頼関係で成り立っているものです。病気を見つけ、治療方針を説明し、患者が納得して治療を行う。病気の中には、すぐには結果が出ず、医師と患者が二人三脚で、長年、治療を続けるものもたくさんあります。そうやって積み重ねてきたものが、マイナ保険証によって少なからず崩されていることは否めません。「マイナ保険証のことで、なんか怪しいことを言われた」と患者さんが感じたら、治療にも影響が出てしまいます。 患者さんにとって、医療機関にとって、何が一番良い方法なのか、現状を正確に把握し、検討し直して欲しいと思います。 (全国保険医団体連合会 本並省吾さん)
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