ベンツが神話だった70年代の「W123」…驚きの安全性と最新テクノロジーは当時の国産車では足元にも及べない知恵が詰まっていました
多彩なエンジンラインアップで多様なニーズに応えた
メルセデス・ベンツ史上で初代「コンパクトシリーズ」として、モダンでファミリー層に人気を博したのが「W114/115」でした。このコンパクトシリーズとして2代目の「W123」シリーズは、「最善か無か」というクルマづくりの哲学に基づき合計約270万台が生産され、メルセデス・ベンツ「Eクラス」史上に残るヒット作品となったのです。W123の人気と性能を支えたメカニズムなどを紹介します。 【画像】70年代に最先端だったメルセデス・ベンツの技術を見る(23枚)
最先端技術を惜しみなく投入した安全性と技術的特徴とは
「W123」シリーズにおける安全性や技術的特徴としては、主に次のようなトピックスが挙げられる。 ・ダブルウィッシュボーン式フロントサスペンション、スクラブ半径ゼロ ・ベラ・バレニ設計に基づく「コルゲート・チューブ・タイプ」のセーフティステアリングコラム ・自動ハイドロニューマチックレベルコントロール付きステーションワゴン ・300TDターボディーゼルモデル(1980年)は、ターボチャージャー付きディーゼルエンジンを搭載したドイツ市場で最初のクルマ ・代替駆動システムの実験:水素、電気モーター、液化ガス ボディはもちろん前後衝撃吸収式構造と客室は頑丈なセーフティセル構造を持ち、ロングホイールベースとワイドトレッドが特徴だ。そして何よりも安全技術に一層磨きをかけている。 1958年に特許を取得したセーフティコーンタイプのドアロックは円錐形の太いピンがドア側に、一方ポスト側にはこれを受け止める頑丈なボックスが付いており、左右上下の衝撃に強い構造、つまりオスとメスががっちりと交わる構造で、しかも通常のかぎ状のロックも掛かる2重のドアロックをW123にも採用した。そのため、ドアを閉めたときにドスッとした音がする。しかも事故の際には、ドアは外から開き乗員を素早く救出できるというものだ。燃料タンクは、トランク隔壁とリアシートバックレスト間、リアクラッシャブルゾーンから外れた安全な場所へ設置している。 サスペンションはフロントが「Sクラス/W116」と同じ、すなわちアッパー・シングルIアーム、ロワー・トライアングルAアームだった。これは「走る実験室」と呼ばれた「C111」で開発したスクラブ半径がゼロになるジオメトリーを持っていた。走行中、前輪タイヤにかかる力がステアリングナックルに影響を与える構造であるから、片輪が障害物を乗り越える場合や、片方のタイヤがバーストしたときなどでも、優れた安定性を発揮した。 ステアリングの最大舵角は44度で、ダブルAアームだった先代の「W114/115」より4度も大きい。ステアリングを据え切りしたときに前から見ると、びっくりするほどタイヤを横に拡げ、しかも急角度で寝ている。筆者はドライブ中の違和感がなく、ただ「ステアリングがよく切れるな」と思う程度なのが不思議なほどであった。リアサスペンションは先代のW114/115譲りのセミトレーリングアーム式のキャパシティを上げたものである。