独立問題に揺れる「カタルーニャ」 スペイン経済の“尻拭い”州民に不満
「GDPの2割」スペイン経済を牽引する存在
この数年、カタルーニャ州における地域ナショナリズムやスペインからの分離・独立を求める声が高まった背景には、2010年にギリシャから始まった「ソブリン・ショック」と呼ばれる欧州債務危機があります。スペイン経済の原動力となっているカタルーニャ州が、結果的に欧州債務危機後のスペイン全体の面倒を見ているという意識が住民の間で高まっているのです。 以前から存在したマドリード政府に対する歴史的な感情のしこりに加えて、スペイン経済の“尻拭い”までカタルーニャが押し付けられたという被害者意識が、独立運動がエスカレートした要因と考えられています。数字に目を向けると、カタルーニャ州の独立支持派の言い分にも一理あることが分かります。 スペインには17の州がありますが、スペインのGDPの20%、スペインの輸出品の約25%はカタルーニャ州が支えており、カタルーニャが独立した場合にスペイン政府は債務の返済で困難な状態に陥るだろうとも予測されています。少し前にはスコットランドの独立運動も大きなニュースとなりましたが、スコットランド経済はイギリス国内のGDPの10%足らずで、経済面で考えた場合に、カタルーニャとスコットランドの独立でスペインとイギリスがそれぞれ直面する問題に大きな差があるのは一目瞭然です。 カタルーニャ州の独立運動は今後どのような展開を見せ、スペイン政府がそれに対してどのような措置を取るのかは現時点でははっきりとしていません。しかし、ヨーロッパにはイタリアやベルギーのように地域の経済格差によって生じた「南北問題」を抱える国もあり、これらの国々における独立運動に拍車がかかるという懸念もあります。 (ジャーナリスト・仲野博文)