2025年政治展望 政権の命運握る来夏の参院選 注目されるネット選挙の影響力 伊藤智永
世界的な「選挙イヤー」だった今年、先進国・地域大国の政権与党は軒並み敗北や後退を余儀なくされた。英米では政権交代が起き、難産だったフランスの内閣は3カ月で総辞職した。インドと南アフリカでも与党は議席を減らした。韓国の「非常戒厳」騒動も、総選挙の与党大敗で追い詰められた尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の自爆である。共通するのは世界的な政治不信の高まりだ。日本もそのうねりを免れない。ただし、今はまだ変化は穏やかな方かもしれない。 石破茂内閣は衆院選に大敗しながらも、野党の足並みがそろわず、退陣までは求めない寛容な世論に助けられて続いている。内閣支持率は不支持率と拮抗(きっこう)しているが、それでも20%台だった岸田文雄前内閣の末期よりは高い。 ◇協調型のスタイルに 石破氏は臨時国会の所信表明演説で「丁寧に」「真摯(しんし)に」「謙虚に」「誠実に」といった表現をちりばめ、「他党の意見を聞き、幅広い合意形成を図る」と強調した。自民党内に基盤がなく、少数与党でもあるため、党内外に頭を低くする協調型のスタイルだ。安倍晋三内閣時の派手な「官邸主導」「自民1強」政治は影を潜め、対立を回避する運営が軌道に乗れば、実はしぶといかもしれない。 衆院選後、一部に石破氏の責任論はあったが、広がらなかった。自民党内で他の誰に代わろうと今の難局は変わらない。衆目一致する代わりの有力候補もいない。石破氏は立ち居振る舞いが見栄えせず、演説は棒読みで、疲労の色も濃いが、健康さえ保てれば、よろよろ延命する展開はあり得る。 年明けの2025年度予算審議が最初の関門だ。衆院予算委員長に30年ぶりで野党議員が就いた。党首討論の回数や時間も増える。風景の変わる国会を、石破氏が独自の弁舌で自家薬籠(やくろう)中のものにできるか、馬脚を現すか。キャスチングボートを握る国民民主党と、党勢の衰退に焦る公明党も要求を繰り出すだろう。それを巧みに取り込み、政策ごとの部分連合で事実上の「自公国」体制を築けるか。試行錯誤の日々となる。