復活手応えの準優勝 錦織圭はなぜファイナルセットに強いのか? 国枝慎吾の仮説は「パターンが読めないから怖い」
【国枝慎吾が錦織圭の「謎」を分析】 「僕は、錦織くんがどうしてこれだけファイナルセットに強いのかといったら、バリエーションじゃないかと思うんですよ」 全員が、国枝氏の言葉に耳を傾ける。 「相手からしてみたら、最後まで何をしてくるかわからない。パターンが読めないから怖いし、だからプレッシャーがかかって自滅もする」 希代の戦略家でもある国枝氏の分析眼は鋭く、解説は正鵠(せいこく)を射る。もっとも、錦織ご本人の「だったらなんで、2セットで勝てないんですか?」の逆質問は、ご愛敬。 「錦織くんは試合が進むにつれて相手に慣れていくが、相手は錦織くんに慣れることができない」というのが、"国枝説"だ。 シーズン開幕戦の香港オープンでも、国枝氏が指摘する錦織のバリエーションが存分に発揮された。 とりわけノリー戦は、錦織の「読めないがゆえの怖さ」が勝因となった試合だろう。この試合での錦織は、第2セットは落とすものの、スマッシュと見せかけたドロップショットなどの憎いプレーを決め、相手の心理に爪痕を残す。 そうして、運命のファイナルセット──。 相手にグランドスマッシュを叩きつけられるも、体勢を崩しつつ飛びつきなんとか返したボールが、絶妙なロブとなりベースラインぎりぎりに落ちる! このミラクルショットが飛び出した場面こそが、自身のブレークポイント。相手のサービスゲームを破りリードした錦織は、そのまま勝利へと駆け込んだ。 このプレーを錦織は、「ファイナルセットに入って、よくあの反応ができた」と自分で自分に驚く。そうして確信した「かなり(以前の自分に)戻ってきた」という手応えこそが、「ピンチに強い錦織」の帰還にほかならない。 「戻ってきた」ということで言うのなら、香港大会での錦織は、サーブのフォームを以前のそれに戻していた。 具体的には、トスからスイングへと移行する際、右足を軸足に引き寄せる動き。このフォームにすることにより、サーブにスピードと変化が生まれる。今大会、要所でエースやサービスウイナーを決める場面が多かったのは、サーブ改善の成果と言えるだろう。