ECBが連続利下げを実施:想定以上のインフレ率の低下と景気下振れへの警戒
ECBの利下げ加速観測とFRBの利下げ減速観測
今回、連続した利下げとなったことは、ECBの利下げペースが加速するとの期待を金融市場で強めるものとなっている。次回12月の理事会でも連続で利下げが見込まれているが、0.5%の利下げ幅になるとの見方も20%程度の確率で金融市場に織り込まれている。また、来年4月まですべての会合で0.25%の利下げが行われる可能性がほぼ完全に市場に織り込まれた。 インフレ率が低下傾向を辿っている点では、ユーロ圏の状況は米国と同様であるが、景気下振れへの懸念については両地域で差がある。この差が、金融政策見通しの差をもたらしている。 米連邦準備制度理事会(FRB)は景気の下振れに先手を打つ観点から、9月に0.5%の大幅利下げに踏み切ったが、その後発表された9月雇用統計などの経済指標が上振れたことから、11月の次回米連邦公開市場委員会(FOMC)では、0.25%の利下げ、あるいは利下げ見送りとの見方で金融市場は揺れている。米国では利下げペースの減速期待が強まっており、ユーロ圏とは対照的である。さらに、こうした欧米での金融政策見通しの差は、為替市場でのドル高ユーロ安を後押ししている面がある。 現在、ユーロドルは1ユーロ=1.084ドル程度の水準にあるが、10月に入ってから、3%以上もユーロは下落している。その背景には、ECBとFRBの利下げ見通しの差があるだろう。 このようなペースでユーロ安が進む場合には、年明けには1ユーロの価値が1ドルを下回る「パリティ(等価)割れ」の可能性が出てくる。その場合には、ECBは利下げに再び慎重な姿勢を強める可能性も残されていよう。金融政策が為替によって大きく振られるのは、日本銀行も同様だ。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英