忙しい時つい見失いがちなビジネスの鉄則とは 起業家として大成功したミュージシャンの教え
音楽に興味のある方なら、「CDベイビー(CD Baby)」という名には聞き覚えがあるかもしれない。 ■ミュージシャンが起業して大成功 『エニシング・ユー・ウォント: すぐれたビジネスはシンプルに表せる』(デレク・シヴァーズ著、児島 修訳、東洋経済新報社)の著者が、1998年に始めた音楽配信サイトである。 注目すべきは、プロのミュージシャンだった彼が、同サイトを通じ起業家としての成功をつかむまでの経緯だ。
シヴァーズは1969年生まれ。プロのミュージシャンとして生計を立てていたが、自分のCDをオンラインで販売してくれる業者がどこにもいなかったため、「それなら自分でCDを販売してやろう」と思いついた。 独学でプログラミングを学び、CDを販売するサイトをつくった。それが評判を呼び、「君のサイトで自分のCDも販売してほしい」という他のミュージシャンが殺到した。それがCDベイビー誕生のきっかけとなった。 (「訳者はしがき」より)
そう、彼は起業家などではなく、生粋のミュージシャンなのだ。 事実、幼少期からロック・ミュージシャンを志し、ボストンのバークリー音楽大学に入学したという実績も持っている。 卒業後はプロのミュージシャンとして音楽で生計を立て、坂本龍一の日本ツアーにもギタリストとして参加したことがあるという。 CDベイビーは、「自分のCDを販売したいからサイトをつくろう」という思いつきから始めたものであり、つまりはビジネスとしてCDベイビーを大きくしようとは考えていなかったわけだ(それでも、すべて自分でやってしまおうという行動力はやはりすごいのだが)。
しかし創業当時は、折しもドットコムブームのまっただなか。時代の流れに乗って経営者としての仕事に没頭するようになり、大成功を収めたのだった。 本書は、そんなシヴァーズによる2011年の著作『Anything You Want』の翻訳版である。 翻訳には2022年の改訂版が利用されている。「書き忘れていた重要な章」が8つ追加されており、48の項目からなる最終ヴァージョンとなったのだ。 1998年から2008年にかけて、僕はとてつもなくワイルドな経験をした。