「得体の知れない劇薬が生まれた」 『脱法ドラッグの罠』著者・森鷹久氏に藤井誠二が聞く(第2回)
藤井:要するにそれまでのものとまったく違ったものになってしまった。要するに、包括規制を受けたあと、その網の目をかいくぐるように違う成分、指定されていない成分を、禁止されていない成分を入れるようになったもんだから、効き目がまったく変わってきちゃったということなんだ。 森:そうですね。それまでは、やはりマイナーチェンジで良かったので、そんなに変わらない。ただおっきな規制を経てまったく別のものを入れなければならなくなったっていう、フルモデルチェンジって言うんですかね。そうなると、もう本当にやはり中身もがらっと変わっちゃった。 藤井:なるほど。そうすると、昨今起きている(ドラッグ使用者の)クルマの暴走とか、人を殺傷するような事件を起こすような原因となってる「危険ドラッグ」はその世代、第4、第5世代以降のものを使った人っていうことですね。 森:僕の中ではもう完全にそう見てまして、実際に身近なところで本当に第5世代以降から、まさに第5世代で自分を制御できないような状態になって、飛び降りて亡くなった方とかいらっしゃいます。ただそのときは、いわゆる自殺としておそらく処理されてるはずで、本の中でもちょっと書いてはいるんですけど、警察もハーブが原因だとはおそらく到底思っていないというか、任意提出を求められてないというふうにおっしゃってたので。 藤井:なるほど。実はじゃあ自殺案件、日本は自殺が多いけれど、実はその背景に引き金になってる可能性もあるということですね。 森:爆発的にそれが増えてるってわけではないんですけど、そういう一面もあると思います。
藤井:森さんの言い方でいうと、じゃあこれをハーブっていうと、なんかすごくソフトなイメージなんだけど、今、売られてるようなものはなんですか。 森:もう、そうですね、「劇物」という以外にないです。 藤井:劇薬ですか。 森:そうですね、劇薬、完全に劇薬です。そもそも、皆さんがなぜドラッグやるかっていうと、やっぱり気持ち良くなりたいっていうのがあります。当然、それはいろんな意味で、性的なものであったり、それこそ頭がさえるようになりたいとか、いろんなそういう何かしらのメリットと言うと言い方がおかしいんですけど、そういうのを求めてドラッグをやられるかたが多いと思うんですね。 ただ昨今のドラッグっていうのは、あの池袋の(通行者をはね殺した)事件だったり、その後ずっと続いてますけども、皆さんこういう事故、結構大きな悲惨な死者が出るような事故を起こされてて、よくよく調べたり聞いたりしてくうちに、(使った人が)気絶するというふうにおっしゃるんですね、最近のハーブは。 藤井:気絶する。服用した途端。 森:ええ。なんで、あの池袋の事件の容疑者、テレビで割とよだれを流しているところがテレビで流れたと思うんですけど、彼はあのときおそらく記憶なくて、お店の近くで吸って、最初は大丈夫だったと思うんですけど、運転してるうちにいつの間にかぽとんと落ちて、いわゆる「落ちた」って言い方ですかね。 で、本当にごくごく最近だと「ハートショット」という、もう本当に史上最悪って言われるような危険ドラッグが出てきて、それでは本当に十何人9月の半ばぐらいからそれの服用でお亡くなりになっていると。 藤井:「ハートショット」。なんかすごい名前ですね。 藤井:それを飲むとどういうような死に方をしてしまうんですか。 森:すいません、実はちょっと「ハートショット」については、実はあんまり調べられてないんですけども。 藤井:なんらかの疾患を起こすということで、例えば心臓だったり。 森:だと思います。例えば神奈川県警のホームページに「危険ドラッグをやめましょう」というような啓発のページが立ち上がってまして、そこ見ていくと症例というふうに出てくるんですけども、ここがもう本当にすさまじい。皆さんその後お亡くなりになったのか、それともなんとか病院に入られて治療されてるのか分かんないんですけども、裸で暴れて、で、自分のおなかを切って、そこから腸を出して、引きずり出して、それで街を走り回ったとか、あとは自分の大便を食べたとか、そういった症例がいくつか出てまして、もう想像超えちゃってるので、これはもう死ぬとかそういった、僕たちの想像を超えたような結果になっています。