老後2000万円問題から5年。最新統計では「必要な老後資金」がいくらになった?
2019年6月に金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループの報告書が公表され、「老後2000万円問題」が話題となりました。 【グラフ】「老後2000万円問題」の根拠となった2017年における高齢無職夫婦の家計収支を公開。最新データを見ると何がわかる? 2024年度を迎えた今、早5年が経過することになります。 しかし、物価上昇が続き実質賃金が下がった現在、更に多くの老後資金が必要ではないかと不安に感じている人もいるでしょう。 本記事では、最新統計では「必要な老後資金」がいくらになったかについて解説します。 老後2000万円が必要な理由と2000万円が本当に必要なのかを確認したうえで、最新統計による必要額を紹介しますので、最後まで御覧ください。 ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
老後2000万円が必要とされた理由
そもそも老後資金”2000万円”は、総務省の「家計調査報告(2017年)」の調査結果を基に試算した金額です。 同報告によると高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の毎月の平均的な家計収支は次の通りです。 ・収入:20万9198円 ・支出:26万3717円 ・赤字:5万4519円 主な収入は社会保障給付、つまり公的年金です。 支出には税金や社会保険料などの非消費支出を含みます。 老後の家計収支を見ると、支出が収入を上回り毎月5万4519円の赤字が発生しています。 公的年金がスタートする65歳から95歳(30年間)まで老後資金を取り崩して赤字を埋めると仮定すると、必要な老後資金は次の通りです。 ・必要な老後資金=5万4519円×12か月×30年=約1962万円 およそ2000万円となり、老後資金として2000万円必要とされました。 しかし、本当にみんなが2000万円貯めなければならないのでしょうか。老後2000万円の妥当性を考えてみましょう。
必要な老後資金は前提条件次第
前述の通り老後2000万円という数字は、2017年の高齢夫婦無職世帯の平均的な家計収支を基にした数字です。 前提条件が変われば、必要な老後資金も変わってきます。 ●単身世帯の必要資金は1500万円以下 前述の家計調査報告によると、高齢単身無職世帯(60歳以上の単身無職世帯)の家計収支は次の通りです。 ・収入:11万4027円 ・支出:15万4742円 ・赤字:4万715円 老後期間を30年とすると、必要な老後資金は次の通りです。 ・必要な老後資金=4万715円×12か月×30年=約1466万円 単身世帯の場合は、2000万円も必要ありません。 ●老後期間が20年ならば約1300万円 厚生労働省の「令和4年簡易生命表」によると、65歳男性の平均余命は19.44年、65歳女性は24.30歳です。 老後2000万円は65歳からの老後期間を30年間と長めに設定したため、金額が大きくなっています。 老後期間を20年と設定すると、夫婦世帯に必要な老後資金は次の通りです。 ・必要な老後資金=5万4519円×12か月×20年=約1308万円 老後期間の設定次第で、必要な老後資金は700万円も変わってきます。 ●国民年金の加入者はより多くの老後資金が必要 国民年金の加入者は、20歳から60歳まで保険料を毎月納付しても年金額は6万8000円(2024年度)です。 夫婦の年金額の合計が13万6000円、生活費を26万3717円と仮定すると、毎月12万7717円の赤字です。 赤字を貯蓄で賄う場合、必要な老後資金は次の通りです。 ・必要な老後資金=12万7717円×12か月×30年=約4598万円 老後資金は、2000万円の倍以上です。 国民年金加入者はより手厚い老後準備が必要です。 このように、必要な老後資金は前提条件によって大きく異なります。 次章では、最新統計に基づいた老後資金を紹介します。