“不食”健康法に洗脳される高校生たちの行く末は? 現代人のダイエット・環境・家族問題への強迫観念を、ブラックユーモア混じりに鋭く問う『ゼロクラブ』
えいがの絵日記 その29
イラストレーターのともゑさんが、心に響いた映画をイラスト絵日記にするシリーズ。今回の題材は、ただいま絶賛公開中の問題作。 【画像】『クラブゼロ』えいがの絵日記はこちら
あの美人女優が変身!
優等生たちが洗脳されていく… ある日、とある名門校に栄養学のノヴァク先生が赴任してきました。 なんと「食べない」健康法を推奨する授業に生徒たちは… 主演は『アリス・イン・ワンダーランド』のミア・ワシコウスカ。ドレスからポロシャツへ。 学校と家、子供と親 そして食がテーマ。さあ食欲なくす?スリラーのはじまりはじまり…
いつの時代も若者は悩むもの
怪しさ100%…まずは「小食」→つぎ「不食」 ノヴァク先生曰く、これをやると寿命が延び、環境保護にも役立つとの事。 どうやら家も学校も息苦しかった生徒たちの心の琴線にも触れたもよう。 健気にノヴァク式を実践。しだいに幸福感まで得るように。 ですが当然、日に日に衰えていく若者たちなのでした…。
衣装デザイナーは監督の姉妹
画面は至ってポップです 生徒たちの制服が補色で眩しい。ノヴァク先生は同系色でコーディネート。 まるでおり紙で作ったような鮮やかな衣装の数々。 加えて俯瞰で見る後頭部が美しい図形のよう。 不穏な空気を吸いながら、カラフルな説明書を見ている気分。
不気味だけど心に残る
終始、静かな映画―― 学校だけど誰も走らない騒がない。 ノヴァク先生が生徒に語りかけます。 「あなたを見てた。 強い意志を持ってるのがわかる」 どこから来たのかは不明の彼女(ノヴァク)。 洗脳の怖さと 洗練された画面。 一瞬、その輪に入っている自分を想像してしまいました。
『クラブゼロ』(2023) Club Zero 上映時間:1時間50分/オーストリア・イギリス・ドイツ・フランス・デンマーク・カタール
監督・共同脚本:ジェシカ・ハウスナー 出演:ミア・ワシコウスカ 他 新任教師ノヴァク(ワシコウスカ)が提唱した小食健康法は、健康や家族問題に悩む高校生の心をつかんだ。すべてがうまくいくように見えたが、彼女の指示は、食物を一切摂らないという極論に至り…!? 寡作ながら問題意識の高い作風で知られる、オーストリア出身の女性監督ハウスナー(『リトル・ジョー』2019)の新作。ポップでカラフルな画面ながら、人間のぞっとする一面を切り取っており考えさせられる。
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