伊藤健太郎が『光る君へ』後半戦の鍵に? 『アシガール』の輝きがついに大河ドラマへ
NHK大河ドラマ『光る君へ』第37回「波紋」に伊藤健太郎演じる若武者・双寿丸が登場する。公式サイトの相関図・キャストのページには、まひろ(吉高由里子)の家族、道長(柄本佑)の家族と縁者がずらりと顔を揃える中で「都の人々」としてポツンと1人だけ双寿丸が紹介されている。 【写真】伊藤健太郎が“発見”された『アシガール』の若君 9月22日放送後の予告動画に映る伊藤健太郎の佇まいから神出鬼没の散楽の一員・直秀(毎熊克哉)を思い浮かべる人も多く、SNSの反響も大きかった。 物語の前半(第2回「めぐりあい」)に登場して、貴族社会のしがらみとは全く別の価値観でたくましく生きようとする庶民の象徴が直秀だった。直秀は、藤原家中心の政治や社会を面白おかしく批判する風刺劇を披露し、まひろも道長も彼らの風刺劇を興味津々で観ていた。 その一方で、貴族たちから金品を盗んでは貧しい庶民に分け与える義賊という裏の顔も直秀にはあった。まひろと道長の身分違いの恋を見守りつつ、2人の将来に影響を与えた直秀。まひろは直秀の言葉「おかしきことこそ、めでたけれ」の意味を噛みしめ、道長は父や兄たちとは違い、家のためではない「民のための政」をすることを誓うことで、自分の使命と向き合ってきた。 道長は地位を得て、もはや権力をがっちりと固めつつあり、威厳さえ漂うようになった。まひろも中宮彰子(見上愛)の指南役として信頼され、『源氏物語』の執筆に忙しい。まひろも道長も身分の高い人々に囲まれ、都を自由に闊歩する庶民の人々と出会う機会がない日々を過ごしている。 そして、物語は後半戦に突入。やんごとなき雅な人々の世界を違う視点から見つめているオリジナルのキャラクターとして重要な役割を担うのが双寿丸である。 双寿丸を演じるにあたり、伊藤健太郎は「初めての大河で、しかも『アシガール』『スカーレット』でお世話になった内田チーフ・プロデューサーを始めとするスタッフさんとのお仕事、出演キャストの皆さんとのお芝居がとても楽しみです。双寿丸はオリジナルのキャラクターということもあり、すごく演じ甲斐がある人物だと思っています。『光る君へ』の後半戦で双寿丸がどのように物語に関わっていくのか、ぜひ楽しみにしていただきたいです。誠心誠意つとめたいと思います」とコメントしている。 ドラマ『アシガール』(NHK総合)の放送開始は2017年9月23日。あれから7年も経ったとは思えないほど、若君・羽木九八郎忠清役で鮮烈な印象を伊藤健太郎は残した。平成の女子高生が戦国時代にタイムスリップ、素敵な若君に一目惚れして、彼を命がけで守るために足軽として奔走する人気漫画を実写化。いくら俊足とはいえ、やる気も根性もない女子高生が足軽になって若君を守りたいって……分かるよ、その気持ち! と応援したくなる妙に心揺さぶられる描写が続き、胸キュンとはまさにこのことだと腑に落ちる。 ヒロイン・唯之助こと速川唯(黒島結菜)のまっすぐすぎるほどの直球の愛情表現を怯むのではなく、かといって利用するのでもなく、自然体で鷹揚に受け止める若君。平成の時代から戦国時代に初めてタイムスリップした唯が足軽の集団に紛れて慌てるのは無理もない。ただ、戦国時代から平成時代にタイムスリップして、なんとなく高校生に紛れて女子にモテても平常心を失わない若君の、その内面の揺れや感情表現の繊細さが自然に伝わるところにハマる人が続出したのだ。 NHK連続テレビ小説『スカーレット』では、闘病しつつ陶芸に励むヒロイン・喜美子(戸田恵梨香)の息子、川原武志を演じた。最近では、映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』(特攻隊員・石丸役)の演技で第47回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞した。 安定した確かな演技力と凛とした佇まい、役柄によって自在に表情を変えても、その作品によってくっきりと鮮やかな印象を残す伊藤健太郎。本作の後半戦は、双寿丸が盛り上げてくれるに違いない。
池沢奈々見