<解説>アニメ「ダンダダン」 心をつかむ映像とドラマ 怪異の裏にある悲しみを希望に
さまざまな要素をちりばめ、ギャップ(落差)とテンポ感により、原作の読後感、印象をアニメで再現しようとした。
◇神回「優しい世界へ」の衝撃
序盤のセルポ星人、ターボババアとの遭遇、フラットウッズモンスターとの戦い、ターボババアとの壮絶な鬼ごっこなどからバトルアクションの印象を強めた同作のイメージをガラッと変えたのは、第7話「優しい世界へ」だろう。第7話では、怪異のアクロバティックさらさらの目も覆いたくなるような悲しい過去が描かれた。SNSでは「神回」と話題になり、自身のオーラでアイラの命を救ったアクさらの姿は、多くの視聴者の涙を誘った。
序盤のターボババアとの鬼ごっこの後も、星子の口から「ババアが現れるのは決まって理不尽な死をとげた少女の霊がいる場所だった。成仏できない少女たちをなぐさめて回ってたのかもしれねえ」とターボババアの背景が語られた。
「ダンダダン」は、さまざまな怪異が登場する中で、その背景、過去にも触れる。原作者の龍さんもインタビューで「やはり、妖怪ものは、昔の悲惨な出来事から作られる要素が多いので、もうちょっとエンタメ寄りにしたい、楽しい感じにしたいという思いはありました。いろいろな怪談を聞いていても、化け物や妖怪は、元々人間だったし、なりたくてなったわけじゃない。だから、悪者って感じじゃないんですよね。葛藤を抱えている人たちなんじゃないか、と考えています」と語っていた。
龍さんは「やっぱり希望がないと悲しすぎるじゃないですか。とにかくエンターテインメントなので、読んだ人に絶対に希望というものをちゃんと見せて終わらせたいと思っています」とも話しており、作品の根底に流れる希望がアニメでも丁寧に表現されている。
迫力のオカルティックバトルと人間、怪異の深いドラマが絶妙なバランスで“ごった煮”されているからこそ、「ダンダダン」は多くの人の心をつかんでいるのだろう。
第1期終盤の宇宙人との戦いを経て、第2期では、モモ、オカルンたちが謎が潜むジジ(円城寺仁)の家で新たな脅威に立ち向かうことになる。第1期を振り返りつつ、第2期が放送される来年夏に備えたい。