「立花さんのYouTubeでテレビのウソがわかった」「メディアは一切信用しない」兵庫県知事選、斎藤元彦氏の応援団に“1か月密着取材” 見えてきた勝利の背景
選挙戦が始まる前、政党や団体の支援がなく孤立無援で戦う斎藤が選挙で勝つことがあるとすれば、都知事選で善戦した石丸伸二のようなネットを使った空中戦に頼るしかないだろう、と私は考えていた。インタビューでそう尋ねると、斎藤はこう答えた。 「もちろん、X(旧Twitter)やInstagram、YouTubeも使っていきます。確かに、石丸さんの選挙戦はすごいと思いますが、私はSNSよりも、街頭演説の中で、一人でも多くの県民に直接訴えていきたいと思っています」 選挙が始まる前の時点の斎藤は、ネット戦略に積極的ではないことが強く印象に残った。 その斎藤が、ネットが持つ威力に気が付き始めた、と感じたのは、選挙戦中盤のこと。演説でこう言い始めた。 「メディアの報道は本当に正しいのかどうか。県民の皆さんがご自身でネットやYouTubeを見て調べて判断している。何が正しいのか、何が真実かを、一人ひとりが判断されています」 こう言って、既存メディアの報道に疑問を投げかけ、あたかも“真実”はネット上にあるかのような発言が増え始めた。 多くの斎藤支持者は、告発文書問題が勃発した当初は、斎藤を悪者だとみなしていたが、その後、ネットの情報を通して“真実”に気付いた人々だった。それを機に、熱烈な斎藤支持者に転じていく。支持者一人ひとりにとっても、ネットを通して“真実”を再発見していく“覚醒の物語”でもあった。
メディアは一切信用しない
私がこの取材で自分自身に課したのは、実名での取材。日本の選挙報道では、あまりにも匿名の有権者取材が多すぎる、と感じていたからだ。 告示日の出陣式に斎藤の演説を聞きに来た神戸市在住の会社経営者の内山淑登(51)は、こう語る。 「最初のころはテレビが報道する、パワハラやおねだりを鵜呑みにして、斎藤って最悪なやつやな、と思っていました。けれど、全国ネットのテレビまでが斎藤さんを叩くようになって、集団いじめのようになってきた。テレビがここまで叩くのはおかしいな、と思って調べだしたんです」 XやFacebookで調べてみると、斎藤が失脚した“本当の理由”が次々に見つかった。百条委員会が結論を出す前に、不信任決議案を可決した裏には、1000億円かかるといわれる県庁舎の建て替えにストップをかけたり、70歳までだった県職員OBの天下りを65歳に引き下げた政策があることを知った。 さらに、百条委で斎藤を攻め立てた県議たちのXの投稿を追うと、「えげつない」ほど斎藤を攻撃していることを知り、その反発心から斎藤を応援する気持ちが芽生えてきた。 内山の主な情報源はネットであり、新聞は購読しておらず、「テレビは1ミリたりとも信用していない」。 神戸市に住む高田会里香(54)は、公示日直後に期日前投票で斎藤に投票した後、5回以上も街頭演説を聞いている。「斎藤さんほどピュアで、クリーンな人はいません。何度話を聞いても感動するんです」と言う。 「メディアは一切信用していません。テレビは見ませんし、新聞も取っていません。メディアが一斉にだれかを攻撃するときは必ずウソがある、と思っています。結局、斎藤さんは利権に切り込んでいったから足を引っ張られたんです。だれが利権側かですか?県のOBや井戸(敏三・前知事)派の職員たち、県庁舎の建設で儲かるはずだった土建屋とかですかね。そうした思いの裏には、私自身が結構な税金を払っているのに、あまり恩恵を受けていないという不満があります。それに、立花さんなどのYouTubeを見て、“真実”を知るようになり、いろんなことが納得できました」(高田)