2030年「タワマン大崩壊」の現実味…60代富裕層夫婦、タワマンを「終の棲家にする」恐ろしいリスク
20階以上の高層マンションである「タワーマンション」。規制緩和がされてから続々と建設され、いまでは富裕層ばかりでなく、一般的なサラリーマンも多く暮らす。利便性の高さが好まれ、高齢の入居者も増えているが、終の棲家とするには、やや危うい側面もあるようだ。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
杞憂に終わった「タワマン2022年問題」だが…
昨年タワマンにささやかれていた「2022年問題」を覚えているだろうか。2021年に開催された東京五輪終了後、不動産価格は大きく下がり、なかでも高額で売買されているタワマン価格の下落は非常に大きいものとなるだろう、という予測だ。 また、マンションは築12~18年ほどで大規模修繕のタイミングを迎えるが、タワマンの場合、2022年がそのピークとなることから、修繕費の積立不足等の問題が露呈するのではと懸念されてきた。 しかし現状を見る限り、この予測は当たらなかった。不動産価格の下落はなく、「タワマン価格大暴落」も杞憂だったといえる。 このような背景から、富裕層がタワマンに寄せる信頼感は、ますます高まっているように見える。自身が暮らすのはもちろん、投資対象としても、熱視線が注がれているのである。
次に訪れる「タワマン2030年問題」の現実味
最近では、高齢者がタワマンを購入するケースも増加している。郊外の一軒家を処分し、夫の出身地である地方都市のタワマンに引っ越した、富裕層の60代夫婦は語る。 「子育てをしている時代は、郊外の広い一軒家が快適でした。もともとリタイアしたら、都心部のマンションに住み替える予定だったのですが、私の出身地にタワマンが建設されたことで計画を変更し、そちらを購入することにしたのです」 この夫婦が暮らす地域はもともと積雪があるところだが、近年の異常気象で夏はこれまで以上に暑くなるなど、昔と比べて気候が厳しくなっている。また、のんびりしているといえば聞こえはいいが、東京都心部のような利便性はなく、生活において車は必須だ。年齢を重ねれば、いくら愛着のある出身地とはいえ、暮らしていくのは大変である。 しかし、そのような懸念を払しょくしたのがタワマンだ。このご夫婦は、郊外の自宅を手放し、出身地のタワマンを購入して本当によかったと振り返る。ゴージャスな内装に行き届いた設備、そしてタワマンならではの立地のよさで利便性も高く、高齢者が暮らすにはもってこいなのである。 「商業施設も行政機関もあり、暮らしているエリアでほとんどのことが完結できます。駅直結なので、表に出ることなく帰宅もできます。郊外の自宅での暮らしを続けていたら、10年後には大変なことになったでしょうね」 しかし、ここで「2030年問題」を不安視する専門家もいる。一般的なマンションと同じく、タワマンも完成から15~20年で大規模修繕を行うことになるが、タワマンはまだ修繕の手法が確立されていないという実情がある。果たして現状の積立金で賄えるのかどうか、それも明確ではない。さらにいうと、近年のインフレから工事費もうなぎ上りだ。もしこの状況が続けば、15~20年前に設定した積立金など、焼け石に水となってしまう。 快適なタワマンを維持していくためには、住民からさらに費用を徴収するしかないのだが、高齢の住民のなかには、本人が生きているかどうかもわからない未来の修繕について費用を払うことを拒否する人も出てくるだろう。 住民の合意形成がおこなえず修繕できなければ、威容を誇る外観も、さまざまな設備も、老朽化・故障したまま放置されることになる。魅力を失ったタワマンからは住民が流出し、資産価値が暴落。最終的にはお金のない高齢者だけが暮らす、巨大スラムが出来上がってしまう――といった未来が見えてくる。 2030年には、築30年以上のマンションが405万戸にもなるとされ、その数はさらに増えていくとみられている。そのなかには規制緩和によって次々と建てられた都心の湾岸タワマンも含まれており、実際にスラム化が懸念されているものもあるという。 合意形成については賛成割合を引き下げる検討がされており、なんとかマンションのスラム化を回避しようという涙ぐましい動きもみられる。だが、修繕金不足についてはすでに問題が顕在化ており、今後はさらに深刻化することが予想される。これらの点から「2030年タワマン問題」についても、引き続き注視していく必要があるだろう。 どれほど堅牢な建造物でも、経年劣化は必ず起こる。いくら終の棲家とはいえ、一度手に入れれば生涯安心…というわけにはいかず、価値を保つには、一定周期でのメンテナンスが不可欠だ。そういう意味では、修繕の見当がつかない建物より、ケアしやすく、売却しやすい物件を手にするほうが、将来不安は少ないといえるだろう。
THE GOLD ONLINE編集部(タワマン取材班)