"脱根性バレー"で歩み始めた新生男子バレー代表
2011年ワールドカップ以来の代表選出となる横田一義は言う。 「サーブだけの練習時間も短いですね。全日本はよくサーブミスが多いと指摘されます。もちろんミスはないに越したことはないけれど、かといって消極的でもいけない。サトウ監督は、強いサーブを打つべき選手に対しては、監督自ら“攻撃的に行け”というサインを出すと宣言しています。責任は監督が取るという意味だと思います。サーブはメンタルがとても大きく作用するプレー。監督がそう言ってくれるだけでも選手の心理には大きな影響があると思いますね」。 延々とサーブだけを何時間も打ち続ける。ワンマンレシーブで一人の選手をしごくという時代遅れの練習が、やっと代表チームから姿を消した。 そして練習の合理化とともに、もうひとつの新しい特徴が選手との対話だ。エースの福澤達哉は言う。 「バレーを長く続けていると年々、少しずつ考え方が凝り固まっていきます。やることもパターン化していたので、いい意味で毎日が新鮮ですね。たとえば助走の方法ひとつとってみても、今まで、これが当たり前だと思っていた概念をサトウ監督の新しい提案によって覆されました。そして、その方法がその選手に合わなければ、また個人に合った方法を試そうという雰囲気がある。まだ合宿は始まったばかりですが、今まで自分にはなかった選択肢が増えていると思います」。 練習の最後、監督から選手に向けて発せられる「Do you have a question?(何か質問はありますか?)」という言葉に、コミュニケーションに力を注ごうとする新監督の姿勢が見える。 「最初の個人面談で監督に“何か疑問があればいつでも聞いてくれ”と言われて驚きました。準備を整えて賢くプレーするという監督の方針に、選手は好感を持っていると思いますよ」(横田)。 リオデジャネイロ五輪に向けて改革を図る男子バレーは、初めての外国人監督の手でどんな変化を見せるのだろうか。 (文責・市川忍/スポーツライター) いちかわ・しのぶ バレーボール、野球を中心に取材中。「プロ野球ai」(日刊スポーツ出版社)、「Number」(文藝春秋)、「月刊バレーボール」(日本文化出版)他、Vプレミアリーグ公式プログラムなどで執筆。著書に2008年の男子バレーボールチーム16年ぶり五輪出場を追った「復活~全日本男子バレーボールチームの挑戦」(角川書店)がある。