グッチ、五感で楽しむ回顧展を京都で アーカイブ集結させイマーシブに歴史を追体験
■革新されていく歴史の物語 イマーシブに体験
――引き出しを開けると、そこに歴史的なアイテムが登場する展示什器(じゅうき)や、円形の空間を取り囲むようにスクリーンを配置し、疾走する馬の映像とひづめの音が来場者を包み込む部屋など、五感を刺激する仕掛けが満載です。非常にエモーショナルな印象を受けました。 「展覧会を組み上げる間、私はずっと『エモーション』という言葉を唱え続けてきました。なので、そう感じていただけるとうれしく思います」 「グッチのヘリテージを単に時系列で並べるのではなく、新しい解釈やエレメントを加え、より豊かな体験へと再構築する、それがこの展覧会の狙いなのです。そしてグッチの起源と、絶えず革新されていくその歴史の物語を、イマーシブ(没入)に体験するエキシビションを考えました」
■「グッチの新しい物語」の語り口を追求
――古い作品が、いまあるモノや新しい技術と呼応することで、生き生きとよみがえる気がしました。グッチのアーカイブに触れて、ご自身に何か発見はありましたか。 「いくつものラグジュアリーブランドの展覧会を手掛けてきましたが、アイテムを時代順に並べるのは好きではありません。『まぜこぜ』にするとアイテム同士で対話が生まれるのです」 「本展では、グッチの新しい物語の語り口を追求しました。フローラやモノグラムをどう配置したら、そこに生まれた関係性を来場者が感じられるんだろうか、とか考えていたのです。グッチのアーカイブ全体が、まるで意図したかのようにつながっていることが面白いのではないかと思っています」 「さまざまなラグジュアリーブランドのアーカイブを見ていますが、グッチのアーカイブが一番整理されていると感じますね。しかもクローズドにはせず、こうして、一般のみなさまにも開放するのはすごいことですし、貴重です。近年、ラグジュアリーブランド各社がアーカイブをお披露目する展覧会を開くケースが増えていますが、創立後、時代を超えて受け継がれてきた物語の重要性を再発見したブランドは多いのではないでしょうか」