惚れてしまう…視聴者をキュンとさせた鈴鹿央士“左右馬”の身振りとは? ドラマ『嘘解きレトリック』第6話考察レビュー
鹿乃子が見えなくなっていたもの
「わたしは、嘘が分かるからこそ見えなくなっているものがあるんだ」 鹿乃子は、また自分を責め始めてしまった。昔から、嘘が聞こえる能力のせいで、周囲にうとまれてきたことが、ずっとトラウマになっているのだろう。嘘が聞こえる能力を持って生まれてしまったのは、鹿乃子のせいじゃないのに。それに、まわりは鹿乃子といて嘘がバレてしまうのが嫌なら、離ればいい。でも、彼女はその能力からずっと離れることはできないのだ。 「あんたが嘘ついてないって、どうやって証明するのよ」 「鹿乃子さんがつく嘘は、誰にも証明できないんだもん」 学生時代、友人からそう言われたとき、鹿乃子はどれだけむなしい想いになっただろう。最初は、鹿乃子のように他人の本心が分かる能力を羨ましいなと思った部分もあったけれど、彼女の葛藤を知るたびに、だんだんとどれだけ辛いことか...と実感するようになった。 人間の本心なんて、分からない。「好きだよ」と言ってくれている人が、本当は心のなかでは「大嫌い」と思っているかもしれないし、その逆だってある。でも、分からないものは、分からないままでいいのかもしれない。
明るさと男らしさを使い分ける左右馬の魅力
「また1人でグルグルしてるんでしょ? その様子じゃ」 鹿乃子が落ち込んだとき、いつもスーパーマンのように駆けつけてくれるのが左右馬だ。「わたし、探偵助手やめます。先生に迷惑をかけたくない。真実を見誤って、人を傷つけるところでした。この力を、仕事にしちゃいけないんです」と鹿乃子が訴えても、「探偵助手をやめても、嘘は聞こえるんでしょ?」と飄々と返す。まるで、その能力を一緒に背負ってあげるよと言いたげな感じで。 「だから、一緒にいればいいんだよ」と、左右馬はどんなときでも鹿乃子を優しく受け入れてあげる。個人的に、「(一緒に)帰ろう」と言ったあと、ちょっぴりおどけた感じで、鹿乃子の頭をお面でポンと叩いた左右馬に、心を奪われてしまった。 左右馬は、いつもふざけて見えるけれど、ちゃんと真面目な話をすることもできる。でも、ずっと暗いわけではなく、空気の切り替えもうまい。そのギャップに、心奪われている人も多いのではないだろうか。鹿乃子が寒そうにくしゃみをしたとき、そっと自分が着ていたジャケットをかけてあげた場面も、ベタではあるがときめいた。 「誰かのそばにいられることが、ひとりじゃないってことだと思ってた。自分のことは信じられなくても、先生のことは信じられる。ようやく、わたしはひとりじゃないって、どういうことなのか分かる気がしました」 ようやく、自分の居場所を見つけることができた鹿乃子。今まで苦しんできたぶん、これからは心許せる左右馬の隣で、心穏やかに過ごしてほしいと思う。 【著者プロフィール:菜本かな】 メディア学科卒のライター。19歳の頃から109ブランドにてアパレル店員を経験。大学時代は学生記者としての活動を行っていた。エンタメとファッションが大好き。
菜本かな