【ネタバレなし】「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」1~3話レビュー。こんな「スター・ウォーズ」が観たかった…!
「スター・ウォーズ」の最新ドラマシリーズ「スター・ウォーズ:スケルトン・クルー」の初回2話が、本日よりディズニープラスで独占配信スタート。予期せず乗り込んだ宇宙船で銀河系の迷子になってしまった“普通”の4人の少年少女たちが、フォースを操る“謎の男”と出会い、故郷への帰還を目指して大冒険を繰り広げるという、 シリーズの新機軸ともいえるスペース・アドベンチャーだ。MOVIE WALKER PRESSでは本作の魅力を深堀りする特集を展開中。本稿では、全8話中の1~3話を先行視聴することができたので、ネタバレなしで感想をお届けしたい。 【写真を見る】危険すぎる宇宙海賊たちの港ってどんなところ?4人の子どもたちの冒険に待ち受ける試練とは… ■「スター・ウォーズ」の知識は不要!まったく新しい舞台設定に心が躍る 「スケルトン・クルー」の舞台となるのは、『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還(エピソード6)』(83)でルーク・スカイウォーカーがダース・シディアスに打ち勝った後の世界。「マンダロリアン」シリーズや「スター・ウォーズ:アソーカ」と同じ時代の物語であるため、事前のシリーズ復習が必須にも感じられるが、本編を視聴してみるとオリジナル・トリロジーや派生作を知らなくともまったく問題ない舞台設定に唸らせられた。 ポイントとなるのは、“ジェダイがおとぎ話となった世界”であることだろう。物語の最序盤で、ジェダイや冒険に憧れる主人公のウィルと、ゾウのような可愛らしい見た目の少年ニールが“ジェダイごっこ”に興じるシーンがあるのだが、2人が発するライトセーバーの音真似は、シリーズを観ていたらやるはずの音と絶妙に異なっているように思われる。これは子どもたちが、本物のジェダイやライトセーバーを見たことがないからであり、この描写から主人公ら子どもたちの持つ知識は、シリーズ未見の視聴者と同じであるというのが明示される。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21)で奇跡の共演を1本の映画で実現した、ジョン・ワッツのバランス感覚と手腕が光る見事な設定だと感じられた。 かといって、「スター・ウォーズ」ファンの琴線に触れるような描写がないのかと問われると、まったくそんなことはない。「マンダロリアン」の海賊ヴェインも登場するなど、あらゆる場面で小ネタも散りばめられている。シリーズの魅力ともいるドッグファイトや危険なクリーチャーの登場など見せ場もしっかり盛り込まれ、銀河という大海原で暴れまわる野蛮な海賊たちの、掟や立ち居振る舞いにもロマンを掻き立てられる。 しっかりとエンタメ作として楽しめる作品に仕上がっていた。 ■『E.T.』『グーニーズ』…1980年代の匂いと親近感 次はストーリーについて。「スティーヴン・スピルバーグによる1980年代の青春冒険映画の銀河版」と称されるとおり、初回ではその影響が特に感じられた。これらの作品が観客をまずワクワクさせるのは“冒険のきっかけ”に遭遇することだが、本作でも少年少女たちが宇宙船を発見する過程が丁寧でありながらもスピーディに展開され、視聴しながらテンションが上がる。そして、「スター・ウォーズ」の世界観にありながらも、『E.T.』(82)をはじめとするアンブリン作品の要素や1980年代の匂いがたしかに香ってくるから不思議だ。 本作に漂う空気感は、レトロ・ポップカルチャーの再ブームを巻き起こした「ストレンジャー・シングス」に共通する点もあるだろう。ベッドの上でフィギュア同士を戦わせる子ども、アメリカ郊外の住宅地を思わせる街並み、子どもたちの移動手段は自転車ならぬホバーバイク…。そういった意味で、これまでで最も親近感のあるシリーズなのかもしれない。いままで“遠い昔、はるか彼方の銀河系で”行われてきたサーガが、もう少しで手が届く、ぐらいの位置まで降りてきたように感じられた。 ■乗組員が“6人”であることの重要性 そして青春冒険モノの肝となる、子役たちの演技にもかなり魅せられる。ジェダイや冒険に憧れるウィムは、目の前のボタンはなんでも押したくなってしまう無邪気な少年。その冒険心や好奇心旺盛さは、『グーニーズ』(85)で海賊伝説の影響を受けて冒険を夢見る少年、マイキーを彷彿とさせる場面もあった。ほかにも親の前では優等生だが裏ではかなりやんちゃで負けん気の強い少女のファーン、「X-MEN」のサイクロップスのようなバイザーをつけた少女のKB、ゾウの見た目の少年のニールとみな個性豊か。思わず4人を応援したくなるような展開も待っている。 道中で出会うフォースを操る “謎の男”を演じるジュード・ロウも、もちろん輝きを放っている。ネタバレのため多くを書くことができないが、なんとも胡散臭さも感じる描写に、『新たなる希望(エピソード4)』(77)のころのハン・ソロをどことなく想起させる場面もあった。なぜフォースが使えるのか、初登場時になぜあんな場所にいたのか。第3話の段階でもあまりにも多くの謎に包まれているため、徐々に明らかになっていくだろう正体に今後も見逃せない。 タイトルになっている「スケルトン・クルー」は“最低限の乗組員”という意味である。視聴してみると、4人の子どもにドロイドと“謎の男“、個性豊かすぎる6人には最低限どころか最適な人数だと感じてしまうだろう。ちなみに、シリーズ第1作『新たなる希望(エピソード4)』でのミレニアム・ファルコンの乗組員は、ルーク、レイア、ハン・ソロ、チューバッカ、R2‐D2、C‐3POの6人(レイア救出前もオビ=ワンが乗船しているため、やはり6人)。役周りは本作とは異なっているものの、スペース・アドベンチャーさらには「スター・ウォーズ」の“新たなはじまり”を描くにあたっては、乗組員が6人であることが重要であるのかもしれない。 今回視聴できたのは第3話までとなるが、まだまだ“スケルトン・クルー”の冒険は始まったばかりだと感じさせ、今後どのような展開が待っているのか続きが気になるばかり。しかも第4話の監督は、「スター・ウォーズ」初参戦となる『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(22)のダニエルズ(ダニエル・クワンとダニエル・シャイナートのコンビ)であり、さらに期待が高まる。ぜひとも初回2話を観て、まったく新しい「スター・ウォーズ」を感じてほしい。 文/編集部