コロナで「戦い方が変わった」ーーニューヨーク「カス」2人組の逆襲
「今やっている番組のキャスティングとかは、スタッフさんがだいぶYouTubeを見てやってくれてる感じがありますね」(屋敷) 「YouTubeでやっていた企画をテレビに落とし込んでくれたりとか。それは本当にありがたいです」(嶋佐) 彼らのYouTubeチャンネルで配信された異色の芸人ドキュメンタリー『ザ・エレクトリカルパレーズ』(エレパレ)は業界内でも大きな反響を巻き起こし、YouTube動画としては異例の2時間以上の大作でありながら、再生回数は211万回を突破した。 「そろそろ業界視聴率とかじゃなくてちゃんとバズりたいですけどね。でも、YouTubeではしゃいでるだけだと思われないように、単独ライブとか、ネタはきっちりやっとかないとあかんなと思います」(屋敷)
消化試合だった「カス」の高校時代
ニューヨークはネタの面白さに定評があるコンビだ。今年6~7月に行われる単独ライブ「Last Message」を過去最大の規模で開催する。東京・大阪・福岡の3都市を回り、全8公演延べ5500人以上を動員する見込みだ。 彼らのネタの中には、特定の人物や行動に対して批判的な視線を向けるものが多い。そのため、彼ら自身が「性格悪い」「生意気だ」「とがってる」などと言われることもある。でも、本人たちには偉そうな意識は全くなく、むしろ自分たちを「カス」だと思っているという。 「この前、嶋佐の母校にロケに行ったんですけど、当時の先生が誰も覚えてなかったんですよ。彼女もいないし、部活もやってないし、オタクでもヤンキーでもなくて、『アフロ田中』みたいな友達しかいなくて。嶋佐の恩師からの手紙を読んだんですけど、それも手書きじゃなくてパソコンで打った文章で『内気な性格だった気がします』って(笑)。たぶん記憶ゼロなんですよ」(屋敷) 「高校時代は消化試合みたいな感覚でしたね。東京で大学生になるって決めてたんで」(嶋佐) 「いじめられてたとかでもないし、オタクでもないし、誰にも迷惑をかけてない、ただのカス(笑)。俺は彼女はおったけど、絶望はしてたし、この町を出てから第2章が始まるみたいな感覚があったんで、気持ちはめっちゃわかるんです。そんなやつらがひな壇で前に行けるわけないんですよ。芸人って、そんなやつが一番向いてない職業ですからね」(屋敷) 何もしていなくて何者でもなかった当時のことを思えば、世間から「生意気だ」「とがってる」などと言われるのも褒め言葉に感じられるという。 「俺らが2人おると『腹立つ』とか『調子乗ってる』とか言うてくれる人もおるじゃないですか。それがすごいよな。何のにおいもせん、誰の記憶にも残らん、植物みたいなやつらが、ちゃんと動物のにおいがするようになったというか」(屋敷) 「それは逆にうれしいことですよね。一番のカスだったわけだから、ある意味では夢を与えてるのかな」(嶋佐)