阪神の藤浪はスランプから脱出できるのか?
阪神のエース、藤浪晋太郎(22)が苦悩している。8月30日の中日戦で初回にまさかの8安打7失点。よほど動揺したのか、一塁ベースカバーの基本を忘れてベンチ内で福留から叱責まで受けた。3年連続2桁勝利をマークをしていたエースが、防御率3.48、6勝10敗と大きく負けが先行してしまっている。 藤浪の不調原因は何なのか。復調の可能性はあるのか、そのためにすべきことは何なのか? 阪神OBでもある評論家の池田親興さんは、「重症だ。結果を出そうと気にするあまり、せっかくの長所が消えてしまっている」と指摘する。 「本来、藤浪の良さは、少々シュート回転しようが、思い切り手足の長さを利用して投げ込んでいく150キロを超える荒々しいストレートにある。それが立ち上がりに制球力がつかないから、バラつかないようにとストライクを投げることだけに気がいき、投げるたびにフォームもリリースポイントも違ってきている。工夫をしているのはわかるが、これまで藤浪が打者に与えていた恐怖感のようなものがなくなってきている。7失点したゲームも変化球ばかりでごまかしていた」 とにかくピッチング内容が安定しない。8月5日のヤクルト戦で7回無失点の好投をしてみせると、2戦続けて左打者を並べられた広島戦に崩れて連敗。24日の横浜DeNA戦で素晴らしいまとまりで7回1失点で6勝目をマークして首脳陣を安心させたが、中日戦で初回7失点の悪夢だ。 セイバーメトリクスのデータを見ても、コントロールの目安となる「BB/9」(9回換算の四球数)は昨年の「3.71」から「3.67」と、若干改善されているが、被打率が、「.223」から「.245」と悪くなっている。特に得点圏での被打率が、昨年は、セ、パ合わせてランキング4位となる「.199」だったのに、今季は「.288」と急落している(ちなみにトップはロッテの石川歩で.169)。つまり「制球は悪いが、走者を置いてから球威で封じて打たれない」投手が、「制球は若干改善したが、長所が消えたため走者を置いて抑えきれない」という投手に劣化してしまっているのである。 結果が出なくなれば、「練習をしない」、「首脳陣の言うことを聞かない」などのありがちな“風評”も飛び交う。結果が出ていれば、「自分で考えて調整をしている」、「ぶれない」という評価に変わるものなのかもしれないが、前述の池田氏は、「勝たねばならない、結果を出さねばならない、というプレッシャーがあるのではないか。藤浪流はあって当然。人の言うことを聞く耳を持てというより、人の言うことを聞けるような環境作りも重要だろう」と、指摘した。