世界GP王者・原田哲也のバイクトーク Vol.126「トップ2の一騎打ちを横目に、気になるのはマルケスとアコスタ」
マルケスの未勝利とアコスタの転倒について
侮れないと言えば、ホールショットデバイス。今さらの機構ではありますが、オーストリアGPではマルク・マルケスのホールショットデバイスがうまく機能せず、ものの見事にフロントアップして出遅れたうえに、フランコ・モルビデリを押し出すという事態になりました。 マルケスを持ってしても、ホールショットデバイスなしではスタートがまったく決まらないわけですからね……。そりゃあライダー誰もが使いたがるわけです(笑)。 そのマルケス、鳴り物入りでドゥカティに移籍しましたが、今シーズンはここまでまさかの未勝利。マシンが型落ちという差はあるにしても、さすがに’20年の負傷以降、彼本来のパフォーマンスが戻ってきていないようにも感じます。マルケスも今年で31歳。今はまだ「型落ちマシンだから」という言い訳ができますが、ファクトリーチームに移って最新マシンを使えるようになる来年が、いよいよ正念場になります。 ──2025年シーズンはファクトリーチームへ移籍するマルケス。難しいと言われる2023年式の型落ちマシンでよく戦っているが、来期はいよいよ真価が試される。
もうひとり気がかりなのが、ペドロ・アコスタです。ここへ来て調子を崩しているように見えますが、それだけ今のMotoGPで勝つのは難しいのでしょう。おそらく勝つ手前までは割とすぐに行けても、トップに追いつき、追い越すためには、ライダーとしてもうひとつシフトアップしなければなりません。 アコスタは、もちろんそのことに気付いています。だから面白いことに(本人は面白くないでしょうが)、本来は彼の長所である「マシンを寝かせながらのブレーキング」で、パタパタと転んでいますよね。これは、彼が自分の武器をどうにかさらに磨こうとしているからだと僕は思います。 「マシンを寝かせながらのブレーキング」は、本当に繊細な操作が求められます。そのシビアなゾーンが自分の武器だとすれば、そこを磨こうとすればどうしてもリスクが高まる。今までよりワンランク上を目指すということは、壁に当たって試行錯誤するということですから、いったんはどうしても操作が雑になってしまうんです。 ──KTM系(GAS GAS含む)のマシンが昨シーズンほどの戦闘力を見せていない中、ルーキーであるアコスタはもがいている。
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