日中外相会談、日本産牛肉・精米輸入の当局間協議を早期再開で一致…東シナ海情勢には深刻な懸念
【北京=上村健太、東慶一郎】岩屋外相は25日、北京の釣魚台国賓館で中国の王毅(ワンイー)外相(共産党政治局員)と会談した。両氏は、首脳・外相を含むハイレベルの往来を進めていくことを確認し、来年早期に王氏が来日して「日中ハイレベル経済対話」を開催することで一致した。岩屋氏は会談後、記者団に対し、中国が日本の排他的経済水域(EEZ)内に新たに設置したとみられるブイが確認され、即時撤去を王氏に要求したことを明らかにした。
日本の外相の訪中は1年8か月ぶり。会談は昼食会を含め、約3時間行われた。岩屋氏は会談の冒頭、「日中関係が発展して良かったと思える関係を構築していきたい」と呼びかけ、王氏は「中日関係が安定すれば、アジアがさらに安定する」と応じた。
両氏は、日中双方の国益を追求する「戦略的互恵関係」の推進を確認し、日本産牛肉や精米の輸入を巡る当局間協議を早期に再開することで一致した。北朝鮮の核・ミサイル問題やウクライナ、中東情勢についても議論し、地域情勢や地球規模課題に関する対話を進めていくことでも一致した。
一方、岩屋氏は、新たに見つかったブイについて、「我が国として受け入れられず、日中関係にマイナスの影響しかない」と抗議した。海上保安庁によると、「中国気象局」などと書かれたブイが今月、沖縄県の与那国島南方で見つかり、同庁は24日夜に航行警報を出し、周辺の船舶に注意を呼びかけた。中国は昨年7月と今年6月にも、日本のEEZなどにブイを設置している。
岩屋氏は、沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海での中国側の一方的な活動や資源開発などにも深刻な懸念を伝えた。日本産水産物の輸入規制の早期撤廃や、在留邦人の安全確保の協力も求めた。
両氏は会談後、観光客の往来などを議論する「日中ハイレベル人的・文化交流対話」も開催し、日本側は中国人が日本に短期滞在する際に必要なビザ(査証)の緩和措置を発表した。10年間有効の「観光数次ビザ」を新設し、団体観光での滞在可能日数を15日から30日に拡大するなどの内容で、中国人観光客の来日を促す狙いがある。
岩屋氏は25日午前、李強(リーチャン)首相とも会談し、日中間の人的交流や経済分野での協力拡大で一致した。