日本・トルコの友好の絆「エルトゥールル号」を次世代へ 保存の取り組み進む
トルコを公式訪問中の秋篠宮ご夫妻は現地時間の6日、イスタンブールの海事博物館で、オスマン帝国(現在のトルコ)の軍艦「エルトゥールル号」に関する展示をご覧になる。明治時代、日本の海岸沿いで遭難し、住民らによる救助劇の舞台となったことで両国の友好関係を象徴する存在となったエルトゥールル号。その遺物を保存する取り組みが、奈良大(奈良市)で進んでいる。 【写真】和歌山県串本町の樫野埼灯台およびエルトゥールル号遭難事件遺跡 エルトゥールル号は明治23(1890)年、和歌山県串本町沖で沈没した。周辺の海底からはこれまで、トルコの研究者らを中心としたチームによって数多くの遺品が引き上げられ、一部は同町のトルコ記念館で展示されている。 木造の船は遭難時、ボイラー爆発により木端みじんになったが、木製の滑車や破片が見つかった。ただ、長期間海水につかっていたことから、水中のバクテリアによって組織が破壊され、地上に引き上げて乾燥させると縮み、原型を留めることができない。特に、金属のついた部品はさびで劣化が加速し、保存が非常に難しい状態だった。 こうした課題の解決に手を挙げたのが、文化財保存の研究者、今津節生学長率いる奈良大だった。糖の一種であるトレハロースを染み込ませることで、乾燥による収縮や金属のさびを防ぐ方法で、30点程度の木製遺物を保存する作業を今年2月から開始。木片などは作業が完了し、間もなく滑車の保存作業に取り掛かるという。保存作業の完了後は、串本町で保管される予定だ。 今津学長は「両国の友好関係の象徴に手助けできるのは感慨深い。木材と金属が合わさった遺物の保存は世界的な課題で、今回の手法はほかの地域でも役立てることができるだろう」と語った。(吉沢智美)