「開発陣のセンスがすごい…」スーファミ不朽の名作『トルネコの大冒険』の「偉大さ」を振り返る
■やられたらレベル1に戻る それでもまた行きたくなるダンジョン
一度やられたらレベルが1に戻ってしまい、また1階からやり直し。しかも手に入れた武器やアイテムもすべて失ってしまうというシステムに、最初は「どこが面白いんだよ!」と感じた人も多かったはずだ。 だが、不思議のダンジョンには「リレミトの巻物」があり、それを使って脱出すれば武器やアイテムを持ち帰ることができる。 しかも道中で手に入る「バイキルトの巻物」や「スカラの巻物」を使って武器や盾を強化することができるので、ダンジョンに何度も入り、少しずつ武器や盾を強くしていくことで先に進めるようになるということに気づく。 この少しずつ武器や盾を強化できるという点に、多くのプレイヤーは心をくすぐられたはず。 トルネコはレベル1に戻ってしまうが、強化した武器や盾はそのままでダンジョンに持ち込める。これを繰り返すことでどんどんダンジョンの奥に行けるようになり、そこに快感を覚えたものである。 だが、初めて降りるフロアにはどんな敵が待っているかわからず、油断すると強い武器や盾を持っていてもやられてしまうということがあった。やられてしまえばせっかく強化した武器や盾も失ってしまい、また1からやりなおしである。心が折れるところであるが、それがまた探求心をくすぐった。 もうこの時点で、プレイヤーたちは立派な武器商人になっていたのである。
■もっと不思議のダンジョン そして続編と進化は続く
不思議のダンジョンの地下27階まで降りると「しあわせの箱」を手に入れることができ、ようやくクリアとなる。だが、実はその後に「もっと不思議のダンジョン」という隠しダンジョンが待っている。 もっと不思議のダンジョンではアイテムの持ち込みはいっさいできず、強化した武器や盾は使えない。しかもこれまでなら手に入った瞬間に「これは薬草だ」とか「これはレミーラの巻物だ」とすぐにわかったのだが、もっと不思議のダンジョンでは「赤い草」とか「ヘビの絵の巻物」などと表示され、1回使ってみないと効果がわからないのである。 さらに難しくなったダンジョンに、「こんなのさすがに無理だろ!」と投げ出してしまいたくなる。だが、不思議なことに、これまで身につけたダンジョン攻略のテクニックの応用でクリアできてしまうのだ。そのあたりの難易度は絶妙で、難しいダンジョンを知恵と工夫、そして何回もダンジョンに挑みプレイヤー自身の「経験値」を上げていくことで乗り切ることができる。それがまさにこのゲームの醍醐味だったといえる。 以上、『トルネコの大冒険』の魅力を振り返ってきた。のちに『不思議のダンジョン』はシリーズ化され、『トルネコの大冒険』の続編もリリースされた。まだ、なじみのなかった特殊なゲーム性の作品がここまでヒットしたのは、ひとえに「トルネコ」というキャラがいたからこそといえるだろう。
徳江風波