ホラー映画で「自分ならこうするのに…」って思ったこと、ありませんか? そんな無数の“もしも”に挑戦できる『The Casting of Frank Stone』の物語がとても気になる
窮地に陥る恋人! 立ちはだかる怪しげな影……! ホラー映画に“ありそう”なこのシチュエーション、みなさんならどちらを選びますか? 【この記事に関連するほかの画像を見る】 自分を信じて立ち向かい「恋人を助けようとした勇敢な若者」になるか、自分の命を守るために逃げて「土壇場で勇気を出しきれず逃げ、それを後悔し続ける若者」になるか……。 これが映画やドラマであれば、その運命は脚本次第。私たちがどれだけ「いや、それは絶対やったら駄目なやつだって!!」とか「自分ならこうするのになぁ」なんて考えても筋書きを変えることはできません。 でも、仮に私たちがスクリーンの前の傍観者ではなく、登場人物の選択を左右できたとしたら? 今回ご紹介する『The Casting of Frank Stone』は、そんな無数の「もしも」に挑戦できるタイトルになっています。しかもかなり細かな選択も分岐に影響するうえ、ゲーム内ロケーションのホラーっぽさもばっちりあるので、“ホラー映画の世界に足を踏み入れた”感がすごい。 そんな本作ですが、実は人気非対称対戦ホラー『デッド・バイ・デイライト』とつながりがあり、同作とは異なる世界線を舞台にしています。さらに開発は『アンティル・ドーン 惨劇の山荘』などで知られるSupermassive Gamesと、実はかなり豪華な布陣。 というわけで、本稿では『The Casting of Frank Stone』の魅力を、実際の選択肢による変化も交えつつ、たっぷりお届けしていきたいと思います。 ※この記事には『The Casting of Frank Stone』のストーリーに関するネタバレが一部ふくまれます。 文/白熊のヨゥ 編集/久田晴 ■選択によって変わる展開とバリエーション豊かな会話が本作の醍醐味 あらためてご紹介すると、本作はストーリー主導のアドベンチャーゲーム。プレイヤーはホラー映画を観るようにこの世界に没入しつつ、メインキャラクターたちと本作のキラーである「フランク・ストーン」に関する物語を読み解いていくことになります。 映画と異なるのは、プレイヤー自身が重要な場面で選択することで、そのキャラクターの運命を変えることができるということ。これが本作の醍醐味であり面白い部分なわけですね。 「運命を変える」というと物々しい表現ですが、これは比喩でもなんでもなく、実際に重要な選択肢を選んだ際に表示されるものになっています。初めてポーズ画面の中に「運命」という項目を見かけた時はちょっと驚きました。 さすがにすべての選択肢や行動が運命に影響を与えるわけではないのですが、細かな選択でも、その後の展開や探索に影響が発生するようになっています。 例えばプロローグにおける最初の「スキルチェック」の場面。狭い隙間を通った直後、唐突にパイプから蒸気が吹き出して体勢を崩しそうになるシーン。 ここで「スキルチェック」に失敗してしまうと、それまで持っていた懐中電灯が壊れてしまいます。探索でも灯りがなく心もとないですし、このあとのカットシーンにも影響が出る。このように本作は選択肢や探索、スキルチェックの成否によって非常に細かな分岐が起こります。 この分岐が本当にすごいです。今回体験版と製品版ふくめ、プロローグ部分は何度も遊んでいるのですが、会話の大筋はもちろん同じなものの、当たり障りのない選択が場の空気を悪くしたり、逆に皮肉のような選択が良好な関係を築くきっかけになったりもして、細かな部分は遊ぶたびに異なる内容になっていました。 こういうの、アドベンチャーゲームで全部の選択肢を見てテキストを掘り起こすのが大好きな身としてはたまらないものがあるんですよね。フルボイスなうえに分岐も多く、楽しみが渋滞している……! 次の項目では、プロローグ時点で選択できる「運命」と、その選択によってどう変化があるか一例を挙げていこうと思います。 ■「運命の選択」の一例と、それによって起きる分岐の一端を紹介 プロローグの時点で選べる「運命の選択」は3つ。順番に見ていきましょう。 ・1.協力者を信頼したか プロローグ(1963年)における操作キャラクター「サム」はこの町の巡査。彼は赤子誘拐事件を捜査するため本作の舞台であるシーダーヒルズ鉄工所の捜索に赴いたわけですが、そこで鉄工所の夜間警備員をしている老人「トム」と出会います。 仕事は相棒の犬に任せ、自身は酒を飲んで寝ているという決して褒められない人物であるトムですが、サムは鉄工所のさらに奥を捜索するため、応援を呼ぶようトムに頼みますが彼はどうにも自信なさげな態度。「俺にできるだろうか……」と弱気を見せるというところで、選択肢のお時間です。 ・2.重傷を負わなかったか トムに応援の要請を任せ鉄工所の奥深く、溶鉱炉へと進むサム。そこでついにフランク・ストーンと対峙します。といっても不意を打たれ壁に突き出たパイプに串刺しにされてしまうサム、なんとか抜け出そうともがきますが……というシーンでスキルチェック。 ・3.フランク・ストーンを阻止できたか 辛くも拘束から抜け出したサムですが、その間にフランクは誘拐した赤子を溶鉱炉へと投げ込もうとします。満身創痍になりながらもなんとか凶行を阻止をするために拳銃に手を伸ばすサム。というところで、もういっちょスキルチェック! といったように、ちょっとした会話から、映画のクライマックスのようなシーンまで、さまざまな場面で運命が定まるようになっています。 そして時は移り変わり、1980年。フランク・ストーンによる惨劇の記憶も薄れたころ、シーダーヒルズに住む3人の若者が(よりにもよって!)件の鉄工所で映画を撮影しているシーン。そしてそんな彼らを見かけ、出ていくように忠告する保安官としてサムも再登場します。 1963年のラストシーンでは、サム自身意識を失う不穏な結末を迎えただけにほっと一息。なのですが早速変化があり、プロローグでフランク・ストーンに重傷を負わされていると、古傷が痛むことを示唆するシーンが挟まります。 その後しばらく物語を進めたころ、映画撮影を諦めきれない若者たちは鉄工所とそこでかつて起きた事件に関して興味を持つことに。やめときゃいいのに……というのは言わないお約束。 そしてその事件の資料として、トムの証言を録音したテープを再生する機会があるのですが、ここもプロローグで選んだ運命によって少し内容が変化します。 プロローグでサムがトムを信頼していると、彼はアルコール依存症を克服したことが判明。さらにその後も親交は続き、葬式にも出席したことが語られます。 一方サムがトムを信頼しなかった場合。トムはアルコール依存症から回復できず、事件に関する証言もまともに行えないまま行方不明に。 確かにトムの仕事中に酒を飲む態度は良くなかったですが、選択肢によってはトムが退役軍人で、厳しい戦争の経験の苦しみを和らげるために酒に頼っていたことが語られます。もうひとつの分岐を知っているのも相まって、なんとも後味の悪い結末です。 そして最後の「フランク・ストーンを阻止できたか」による分岐なんですが、実は筆者はその変化をまだ確認できていなかったりします。本作には数々の分岐がありますが、直前の選択肢だけで結果が決まるわけではなく、更にさかのぼった場面での選択によって展開が決まることもあるんですよね。 比較的近い時系列で影響が判明したふたつの選択に対して、一羽の蝶の羽ばたきが、遠く離れた土地で竜巻を起こす「バタフライ・エフェクト」のように、少し遠い時点で関係してくる選択肢なのかもしれません。 ■プレイヤー自身が「配役(キャスティング)」を変更できるという面白さ 唐突ですが、ホラー映画には大まかに分けて3種類の「被害者役」が存在すると思っています。 その1、考えうる限り最悪の選択肢を選び続け「命を落とす者」 その2、健闘するがそれでも正解に辿り着けず「誰かに託す者」 その3、窮地に陥りながらも正解を掴み取って「生き延びる者」 本作は冒頭触れたように、ひとりの青年を「恋人を助けようとした勇敢な若者」にも「土壇場で勇気を出しきれず逃げ、それを後悔し続ける若者」にもできますし、本文で詳しく紹介したサムも「勇敢で思慮深い英雄」にも「浅慮で勇猛なだけの警官」にすることもプレイヤーの選択次第でできてしまう。 こちらも冒頭の繰り返しにはなりますが、映画は筋書きが決まっていてどれだけキャラクターを気に入っても「脚本という運命」を変えることはできません。 ただ、本作はプレイヤーが選ぶことで筋書きに介入し、メインキャラクターそれぞれを1から3のどの役にも配役できてしまう。これは映画好きとしても非常に面白いし興味深いと感じました。 そして今回はゲームの前半に焦点を当てて紹介してきましたが、後半からは一挙一動が死に直結するようなスリリングな選択の連続が待っているし、物語の細部まで理解しようと思うなら、ときにはあえて残酷な選択肢を選ぶことも必要になってきます。 また本作は、プロローグである1963年、そして鉄工所を舞台に再び事件が起こる1980年のふたつのタイムラインに加え、もうひとつ別の年代を舞台にした物語も語られていきます。 あくまでもプロローグの1963年とは異なり、1980年の物語と並行して展開されるので、それぞれの時代の「点」が異なる時代の「点」と繋がって「線」となっていく壮大さも、尺の都合がある映画ではなかなか実現しにくい本作ならではの魅力になっていますね。 まぁいろいろと書いてきましたが、本作をプレイするうえで一番大事なのは自分の直感を信じることだと思っています。その結果紡がれた物語は間違いなく、遊んだプレイヤーだけのものになりますからね。 今回は「ホラーあるある」と少し茶化した表現で言及しましたが、そういったホラー映画の要所を抑えた演出や、映画のロケーションのような舞台をじっくり探索できるのは、このジャンルが好きな方なら心躍るものがあると思います。 実際筆者もスピンオフ元に関しては、数多のホラーコンテンツとコラボをしている「魑魅魍魎が跋扈するスーパーナチュラル大乱闘」くらいの超絶浅い認識しかなかったんですが、本作のミステリアスな物語は先が気になって仕方がありませんでした。 『デッド・バイ・デイライト』をプレイしたことがなくても、この記事で興味が湧いたり、ホラー映画やドラマが好きというかたは体験版や公式サイトなどチェックして頂ければと思います。
電ファミニコゲーマー:
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