『花嫁はどこへ?』キラン・ラオ監督 大事なのは観客が自分でたどり着くこと 【Director’s Interview Vol.438】
2001年のインド。同じベールで顔が隠れた2人の花嫁が、花婿の家へ向かう満員列車の中で取り違えられた!?育ちも性格も全く異なる2人の女性の想定外の人生を描く本作は、Rotten Tomatoesで批評家100%、観客95%という驚異の高評価を叩き出し、第97回米アカデミー賞国際長編映画賞のインド代表に選出された。手掛けたのは『ムンバイ・ダイアリーズ』(10)のキラン・ラオ監督。彼女はいかにして本作を作り上げたのか。ラオ監督に話を伺った。 『花嫁はどこへ?』あらすじ 2001年、とあるインドの村。プールとジャヤ、結婚式を終えた2人の花嫁は同じ満員列車に乗って花婿の家に向かっていた。だが、たまたま同じ赤いベールで顔が隠れていたことから、プールの夫のディーパクがかん違いしてジャヤを連れ帰ってしまう。置き去りにされたプールは内気で従順、何事もディーパクに頼りきりで彼の家の住所も電話番号もわからない。そんな彼女をみて、屋台の女主人が手を差し伸べる。一方、聡明で強情なジャヤはディーパクの家族に、なぜか夫と自分の名前を偽って告げる。果たして、2人の予想外の人生のゆくえは──?
コンペで見つかった脚本
Q:本作の脚本はコンペの中から見つかったものだそうですが、最初に読んだときはどんな印象がありましたか。 ラオ:二人の女性が入れ違ってしまうことに「そんなブッ飛んだことある?」と思いましたが、「いや、起こり得るかもしれないな」と。映画として色々盛り込めそうで、想像が膨らみましたね。女性が日常から離れて旅に出るところに惹かれましたし、困難に直面した女性が立ち向かう映画にもなり得る。やり方によってはユーモアを含んだ映画にも出来ると思いました。 Q:脚本を最初に見つけたのはプロデューサーのアーミル・カーン氏だそうですね。 ラオ:脚本を読んだアーミルは私のことが頭に浮かんだみたいで、「この脚本を監督してみないか?」と尋ねてくれました。当時の私は自身で書いている脚本があったのですが、それは長年うまくいってなかった。他人の書いた脚本で私が映画を撮るだろうかと、彼は気を遣ってくれたみたいです。脚本を読んでみると、とても面白くてワクワクしてきた。すぐに盛り上がってしまいました。
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