群馬大生が絵本作り「紙の魅力を伝えたい」 デジタル時代こそ挑戦、地域活性化にも一役
出版不況と言われて久しい中、群馬大(前橋市)の学生らが紙の本の魅力を伝えるプロジェクトに取り組む。絵本などの書籍制作を通じ「デジタル時代こそ紙の価値を訴えたい」と意気込むのは、紙とデジタル端末の比較研究を行う柴田博仁(しばた・ひろひと)教授(55)。地域活性化の観点からも、本作りに関わる人を増やそうと、学生らと挑戦を続ける。(共同通信=岩崎真夕) 「めっちゃいい」「紙質が本の雰囲気に合ってる」。2023年11月下旬、群馬大荒牧キャンパスの研究室で、社会情報学部4年の7人が自ら制作した絵本を手にして喜んだ。本作りプロジェクトは2021年から始まり、今回で2冊目だ。 80ページを超える絵本のタイトルは「つむぐ」。幸せをテーマに、メンバーの実体験と創作を織り交ぜた3編の物語で構成した。前橋市の印刷会社や紙の卸売会社を見学し、企画、執筆から制作まで1年半を費やした。 こだわったのは、物語ごとに手触りや色が異なる用紙を採用した点だ。それぞれのイメージに合うよう、印刷会社を訪ねて「写真集のようにピカピカ反射する紙」や「画用紙のようにざらざらした紙」を選択。物語の世界観を踏まえ、各物語の前に挿入する色紙も、色の濃淡や明暗が異なる複数から吟味して選んだ。
柴田教授は、実物の手触りや見た目から、より深く情報を読み取れるのが紙メディアの利点だと説明。「紙は手で扱いやすく五感を刺激する。物語の世界にどっぷり浸ることができる」と語る。 4年生の小暮真緒(こぐれ・まお)さん(22)は絵本作りをきっかけに、前橋市内の印刷会社への就職が内定。「人生のターニングポイントになった」とほほえむ。柴田教授は「本作りを通じ、学生に本好きになってほしい。前橋を『本のまち』として活性化させたい」と強調する。 絵本は非売品で、県内の図書館に寄贈される。