生物学的に“不安”はあって当たり前 焦りと不安を軽くするお守り言葉とは?
4月は入学や就職、転職、引っ越しなど、新しい生活の始まりだった人も多いでしょう。それから1カ月が過ぎ、新しい環境にもちょっとばかり慣れてきた頃だと思います。最初は無我夢中だったのが、ちょっと慣れてくると逆にいろいろと不安も生じてくるものです。「5月病」というのはこんな状況かもしれません。 困ったことに、不安は自己増殖します。ポジティブ思考が賞賛され、不安はマイナスの感情だという評価が定着していると、自分が不安な気持ちでいることそのものが、「不安になっちゃいけない」という気持ちを煽って、さらに不安が強まります。
不安を感じるのは当たり前
そんな時に役立つアドバイスは、「人に限らず生き物はもともと不安を感じやすいものなので、気にしなくていい」、「不安を感じるのは当たり前。だって、これは生物学的な真実なのだから」ということです。 ぼんやりしていると猛獣に食べられてしまう自然界では、ちょっと変なものを見たり聞いたりすると不安になって注意を集中し、ほんとうに猛獣がいれば怖くなって逃げ出さないと生き延びることはできません。のんきな生き物は食べられてしまいます。不安や恐怖を感じやすい生き物が子孫を残した。その最先端にいるのが現代の人間であれば、人間が不安や恐怖を感じやすいのは当然です。このような冷静な認識、あるいは開き直りは、不安が自己増殖する悪循環への特効薬です。
不安を煽る商売とその受け止め方
この生物学的真理を一番よく心得ているのは、広告業界の人たちでしょう。人の心に突き刺さる広告は、幸福感よりも不安をあおる広告です。 「〇〇すれば(〇〇を買えば)幸せになる」、という広告より 「〇〇しないと(〇〇を買わないと)不幸になる」、というタイプの広告の方が見る人を引き付けます。 「知らないの? みんな〇〇してますよ」とか「もちろん、〇〇してますよね」、なども同じ系統の不安をあおる広告です。 テレビを観ていればこの種の不安を煽るコマーシャルが絶えず流れているし、ネットでもこの種の広告に事欠きません。まじめに付き合っていると、本当に不安神経症になりそうですが、そんな時にこそ、ちょっと一歩引いて、「あっ、生物学的真理を活用(悪用?)している」と冷静に考えるといいでしょう。煽られた不安に条件反射してはいけません。むしろ、不安を煽るコマーシャルを制作する人たちを「さすがプロだな」と冷静に評価するといいかもしれません。