「斎藤元彦氏の圧勝」は選挙制度の"欠陥"である…「2人に1人が投票所にたどり着けない」高齢世代の深刻な格差
■「ネット型選挙」を前に、高齢者はなす術もない もちろん80代以上の人でも、90歳を超えた私の母のように、ネットやSNSを駆使するように今やなってきたが、そんなご時世でも、これらによる扇動がもたらす「劇場型選挙」の中心に位置する有権者は、やはり60代以下といえるだろう。 こういう「ネット扇動型選挙」の際に、ネットによる影響や扇動を受けにくい年代の有権者の民意が、自らの意思ではなく、行政の不作為による投票機会の制約という形で封印されている現状は、あまりにも歪んだ民主国家の姿とは言えまいか。 そもそも現在の日本で高齢者優遇政策がおこなわれていると言えるだろうか。じっさいには、高齢者の医療費自己負担割合が引き上げられ、介護保険制度も改悪され、高齢者の貧困率は増加傾向、生活保護捕捉率も低く抑えられ……けっして高齢者優遇政策などおこなわれているとは言えない現状ではないのか。 その状況にもかかわらず、『楢山節考』や『PLAN 75』といった映画を彷彿とさせる“姥捨山政策”を打ち出す政党が大躍進。「シルバー民主主義」など現実には存在していないと言わざるを得ないだろう。 もちろん現役世代や若者に余裕があるなどと言うつもりもない。高齢者にも現役世代にも若者にも、生活苦に喘いでいる人たちがいるという現実を見ることなく、世代間対立という一見同調してしまいやすい言説に乗せられてはいけないということを、私は述べたいだけである。熱狂や扇動に踊らされ、真の“敵”を見誤ってはいけないのだ。 ---------- 木村 知(きむら・とも) 医師 1968年生まれ。医師。10年間、外科医として大学病院などに勤務した後、現在は在宅医療を中心に、多くの患者さんの診療、看取りを行っている。加えて臨床研修医指導にも従事し、後進の育成も手掛けている。医療者ならではの視点で、時事問題、政治問題についても積極的に発信。新聞・週刊誌にも多数のコメントを提供している。2024年3月8日、角川新書より最新刊『大往生の作法 在宅医だからわかった人生最終コーナーの歩き方』発刊。医学博士、臨床研修指導医、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。 ----------
医師 木村 知