「斎藤元彦氏の圧勝」は選挙制度の"欠陥"である…「2人に1人が投票所にたどり着けない」高齢世代の深刻な格差
■郵便投票もできなければ、投票所にも行けない だが2人の意思は変わらなかった。いわゆる「寝たきり」ではないものの、なにしろ「動くことがしんどい」というのである。こうした高齢者はけっしてこの2人にかぎったことではないはずだ。そしてこのような人たちは、選挙の際にいかなる投票行動をとっているのであろうか。 2017年に総務省がまとめた報告書がある。2015年度に要介護認定を受けた人のうち要介護4の96%、要介護3の80%が寝たきりやそれに近い状態であったという。 現在、郵便投票をするには「身体障害者手帳」か「戦傷病者手帳」を持っている人のうち移動機能障害1級または2級など障害の程度が重い人や、要介護5という条件を満たす必要があるが、つまりこの条件を満たさなくとも投票所に行くことがきわめて困難な人たちが、数多く存在するということだ。 総務省は報告書で、これら要介護4と3の人にも郵便投票ができるよう対象を広げることが適当とし、電子投票などそのほかの手段の選択肢を広げることにも言及しているが、条件緩和や選択肢拡大の議論は、遅々として国会では進んでいないのが現状である。 ■SNSの扇動が大きな影響を与えた兵庫県知事選 もちろんこれらの「投票難民」は高齢者にかぎったものではない。しかし総務省がまとめた2017年の衆院選の全国投票率は、20代前半の30.74%から年齢層が上がるごとに上昇し、70代前半が74.16%と最高に。それが、70代後半になると70.26%にやや低下し、80代以上は46.83%に急落してしまうとのことである。 80代以上になると急速に政治から興味がなくなるとは考えられないゆえ、少なくない高齢者が、投票する意思を持ちながら投票所に到達できないという状況が放置されたままであるという事実は、これらのデータが裏づけていると言ってよかろう。 すべての有権者に公平であるべき選挙権、投票の機会が事実上制約されているこの状況は、民主主義、基本的人権の保障の根幹にかかわる問題である。しかもこの制約の影響をもっとも受けやすいのは、社会的・経済的・身体的にもハンディキャップのある高齢者や難病・障がいをかかえる人たちであり、これは政治がもっとも耳を傾け、声を聞くべき人たちとも言えるだろう。投票にかかる移動支援はもちろんのこと、郵便投票の条件緩和と投票手段の多様化は喫緊だ。 先日の兵庫県知事選挙では、SNSやネットでの扇動が投票結果に大きな影響をおよぼすこととなった。そしてこれらの扇動に乗っかったのは若年層が中心とされる。じっさい共同通信社が実施した出口調査を年代別に見ると、斎藤元彦氏は60代以下の全年代で他の候補を上回ったという。