「ベッド」と「ふとん」、どちらが高齢者の老化予防にいい?理学療法士の「意外な答え」
---------- 「寝起きがラクになるので、ベッドにしたほうがいい」。年をとるとそう考える人が多くなるが、実際はどうなのだろうか? 著書に『こうして、人は老いていく』がある上村理絵氏が、「ベッド」と「ふとん」、老化予防にいいのはどちらなのか、理学療法士の目線からズバリ答えを出す。 ---------- 【写真】快適な睡眠は「ふくらはぎ」が決める…!「夜のトイレ」はこう防ぐ
「年をとったらベッドがいい」は本当か?
先日、こんなことがありました。 橋本さん(仮名)は、私たちのデイサービスに9年通っている90代の女性で、変形性膝関節症を患い、膝関節に人工関節を入れる手術を受けています。 彼女は、昔から床に布団を敷いて、寝起きをしていました。 それが先日、ベッドのほうが起き上がるのがラクで、高齢者の多くがベッドを利用しているということを理由に、ご家族やケアマネジャーから、ベッドの導入を強くすすめられたそうです。 彼女自身は特に今の布団のままでも不自由は感じておらず、ベッドは場所をとることもあって、どうしたほうがいいのかと、私に相談に来られました。 確かに、起き上がりがラクになるという理由で、布団からベッドに替える高齢者はたくさんいらっしゃいます。 1人で起き上がれない、つらい、床で寝ていると腰が痛い、よく眠れないなどといったお困りごとがある方なら、確かにベッドに変えたほうがいいでしょう。 ただ、本人が布団で寝起きができて、不自由を感じていないのに、高齢者だから、膝の手術をしているからと いう理由だけで環境を変えるのは、むしろ危険です。
ラクに生活できる環境をつくらない
ベッドからよりも、床から起き上がるほうが、筋肉をより使います。 つまり、布団からベッドに変えることによって、日々の生活のなかで無意識に筋肉を鍛えるチャンスを失ってしまうのです。 手すりをつけるなどの介護用のリフォームについても同様です。 「60歳を過ぎたら、手すりをつけるとか、体を守るためのリフォームをしたほうがよいと言われたのですが、どう思いますか」 こんな質問をよく受けます。 結論からいえば、体の状態は個人差が大きいにもかかわらず、一律に年齢だけでリフォームをするかどうかを判断するのは、賛成しかねます。 何度も転倒を繰り返していて危ない、明らかに体が弱っている、病気を患ったなど、何かしらの明確な理由があれば、手すりをつける、 すべりにくい床にする、段差をなくすなどといった処置が必要でしょう。 しかし、普通に生活できているのに、リフォームをして、わざわざラクに生活できる環境をつくるのは、老化予防・改善の観点からいうと、望ましくありません。