ドローもJ2降格圏を脱した神戸の大迫勇也が鹿島戦で派手なゴールパフォーマンスをした本当の理由とは?
そして、今シーズンだけで4人目の指揮官となった吉田孝行監督(45)のもと、ようやく神戸に復調の兆しが見えてきた。初陣となった今月2日のサガン鳥栖戦を2-0で勝利すると、6日の清水戦、9日の磐田戦と3連勝。大迫のプレー時間も17分、24分、26分と推移したなかで、清水戦と磐田戦では連続して決勝ゴールをあげた。 迎えた鹿島戦では、武藤が負傷退場するアクシデントもあって、大迫のプレー時間は51分を数えた。その間に3試合連続のゴールを決め、後半15分には浮き球の競り合いを巧みに制して抜け出し、たまらずユニフォームを引っ張るキム・ミンテのファウルを誘発。2枚目のイエローカードをもらったキム・ミンテは退場を宣告された。 首位の横浜F・マリノスを追走するためにも、絶対に負けられないと執念をむき出しにした鹿島の前に後半42分に追いつかれた。クォン・スンテのファインセーブに阻まれたが、大迫はアディショナルタイムに左足から強烈なシュートを放っている。 鬼気迫る大迫の姿に、吉田監督は「このスタジアムは彼にとっても特別な地だと思うので、そこでゴールできたことはよかった」と言及した上で、こう続けた。 「怪我の状態はもう問題ないと思う」 さらに後半30分までは同じピッチで、それ以降は交代で下がったベンチで大迫のプレーを見続けたキャプテンのMFアンドレス・イニエスタ(38)も、復活への階段を駆け上っている大迫の現在地を歓迎するようにエールを送った。 「フォワードにとって点を取ることは一番重要な仕事だし、そこでチームに貢献してくれているとすごく感じている。ヴィッセル神戸にとって非常に重要な選手である彼が、引き続きこのレベルでプレーしてくれることを願っている」 1時間遅く始まった一戦で、ガンバがセレッソ大阪に逆転負けを喫した。この結果、神戸とガンバが勝ち点21で並び、得失点差で上回る神戸が15位に浮上。吉田監督が就任した時点の最下位から、4試合無敗を続けてJ2降格圏から脱出した。 それでも連勝中に「僕たちは緩んでいる場合じゃないので」と勝って兜の緒を締めよ、と語っていた大迫は4連勝を逃した試合結果を課題にあげた。 「チーム全体としてゴールに向かうことができているけど、今日に限っては相手が10人になったし、勝たなければいけない試合だった。僕自身は練習もなかなかフルでできていなかったので、この2週間でいいコンディションに持っていきたい」 代表活動に伴い、リーグ戦の日程はホームのノエビアスタジアム神戸に柏レイソルを迎える30日の次節まで空き、神戸は現時点で17日から4日間のオフを設けている。経験と実績が十分だからと、E-1選手権招集を免除されている大迫はまずは心身両面で鋭気を養い、神戸をさらに上昇気流に乗せるべく、完全復活への牙を研ぎ澄ましていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)