建築総額1億7,000万円、家賃手取り年間110万円…「35年のサブリース、決断すべき?」70代不動産オーナーの絶体絶命
建築会社の見積には「事業費:1億7,000万円」と…
建築会社からは、築35年のアパートは全室空室にしてからの建て直しを勧められており、ほどなく全室が空室になる予定です。 しかし、そのままではアパートは建っていても賃借人がいないため、土地は更地評価、建物も借家権を引くことはできません。建築費の借入も返済が終わっており、マイナスにできる要素はありません。結果、更地と同じで節税対策にはならないため、早めに次の対策を進めたほうがいいということになります。 「建築会社からは、すでに建て替えの提案があります。担当者が図面を持って〈いいプランですよ〉ニコニコ営業に来るのです」 筆者と提携先の税理士は、佐藤さんから建設会社の見積書を見せてもらいました。確認すると「事業費:1億7,000万円」と大きく記載されています。 土地65坪、建蔽率60%、容積率200%の立地ですので、130坪の建物が建ちますが、提案のブランは鉄骨造3階建て、45m2、2DKの部屋で9世帯の建物ができる内容です。 総事業費を建築面積で割ってみると、坪単価は170万円となりました。
「この35年サブリース、決断していいのでしょうか?」
収支のシミュレーションもあり、家賃は1世帯8万5,000円、全戸で76万5,000円。借入返済は月52万円。 建築会社とのサブリース契約が前提となっていることから、一定額の家賃が振り込まれる契約ですが、注意すべき点もあります。 査定家賃は76万5,000円の85%で65万250円ですが、そこから管理費など8万円が差し引かれ、月額の振り込みは57万250円。土地と建物の固定資産税50万円を引くと、残りは110万円。 35年間の借入返済を抱えながら、年間たった110万円の手取りしか残らない計算です。
土地を維持したいなら、空き地にしていてはダメだが…
土地を所有する場合、空き地では節税対策はできません。土地を維持しながら節税対策するなら、建物を建てて賃貸することが必要になります。土地活用でアパートやマンションを建てることは、収入を得ることと節税対策をすることの、2つの目的があるといえます。 しかし、建物を建てるには建築資金が必要です。資金の余裕があれば、自己資金を建築費にするだけでも現金から固定資産税評価の建物に変わりますので、十分に節税効果が得られます。 ですが、実際はまとまった現金がないケースが多く、また、現金はほかの用途のために持っていたいという場合もあることから、たいていは金融機関から融資を受けるかたちになります。そのため、借入が節税対策の目的になることもあります。