【社説】国際情勢と日本 安定に多国協調が必要だ
第2次大戦終結から80年を迎える世界を不穏な雲が覆う。「力による支配」から「法の支配」を目指した戦後の国際秩序が大きく揺らいでいる。 波乱をもたらす要素は各地に存在し、国際協調は試練にさらされそうだ。日本も外交力が問われる一年となるだろう。
■トランプ政権に恐々
最大の注目は今月20日の米トランプ政権の再スタートである。 自国第一主義を掲げ、敵視する中国などに強硬な姿勢で向き合うのは1期目と変わらない。 不安材料は尽きない。一つは高関税だ。トランプ氏は当選後に自身の交流サイト(SNS)で、中国からの輸入品のほぼすべてに10%の追加関税を課し、カナダとメキシコには25%の関税をかけると表明した。 米国の貿易赤字削減を目指す自国優先の発想のようだ。対象国の拡大もあり得る。2023年の米国の輸入相手国で、メキシコ、カナダ、中国、ドイツに次ぐ第5位の日本も決して安心できない。 米政府の歳出削減のため、日本に在日米軍駐留経費の大幅な負担増を迫る可能性もある。 トランプ氏は多国協調の枠組みに否定的だ。バイデン政権で進展した日米韓の連携をはじめ、日米に韓国やオーストラリア、フィリピンを加えた協力枠組みなどを軽視しかねない。 中国や北朝鮮への抑止力が弱まり、アジアの平和と安定が揺らぐ事態が懸念される。 石破茂首相はトランプ氏との直接会談を早期に実現させ、意思疎通を図るべきだ。同盟国の立場から日米連携の価値と国際協調の重要性を説いてほしい。 ウクライナでの戦闘にも影響があるかもしれない。トランプ氏は「(大統領に復帰すれば)戦争を24時間以内に終わらせる」と豪語する。どのようにして停戦に導くかは不明だ。 ウクライナに対して支援停止の脅しをかけ、ロシアに占領された領土の返還を諦めさせるような停戦だと、国際秩序を乱したロシアを利する。 パレスチナ自治区ガザでの戦闘停止にも意欲を示す。イスラエル寄りの停戦合意になっては、戦闘がいつ再燃するか分からない。米国にはイスラエルに強く自制を促す責務がある。