【社説】国際情勢と日本 安定に多国協調が必要だ
■韓中との関係前進を
アジアで最も目が離せないのは隣の韓国だ。 韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は昨年12月に宣言した非常戒厳で国内を混乱に陥れ、国会は尹氏の弾劾訴追案を可決した。憲法裁判所が弾劾は妥当と判断すれば罷免され、大統領選が行われる。 憲法裁の判断には2、3カ月を要するとみられる。尹氏は内乱罪の疑いで捜査も受けている。 トランプ政権の再始動が日米韓の連携に影響を及ぼす不安がある中で、日韓の協力関係が弱まる事態は避けたい。 折しも日韓国交正常化から60年の節目である。尹氏のリーダーシップで、極度に悪化していた両国の関係は劇的に好転した。この流れを止めてはならない。 トランプ氏の再登板で米国との対立激化が予想される中国は、日本産水産物の輸入再開へかじを切るなど、このところ日本との関係改善を探る動きを強めている。日本は官民両面で中国への働きかけを強めたい。 石破首相は中国の習近平国家主席との会談を通じ、反スパイ法の是正や中国で身柄を拘束された邦人の早期解放を要求すべきだ。 昨年は日本原水爆被害者団体協議会(被団協)がノーベル平和賞を受賞するうれしいニュースがあった。 広島、長崎に原爆が投下されて以来80年近く、世界の戦争で核兵器が使われなかったのは、被爆者の身を削る訴えが「核のタブー」を確立させたからだ。 被爆体験を国際社会で共有し、「核兵器なき世界」へ近づく外交に尽力することが日本政府の役割である。当面は核兵器禁止条約への対応に注目したい。
西日本新聞