【報知映画賞】主演男優賞は横浜流星 助演、主演、主演で史上初の3年連続受賞「役としていることだけをずっと考えている」
今年度の映画賞レースの幕開けとなる「第49回報知映画賞」の各賞が25日、発表された。主演男優賞は「正体」(藤井道人監督、29日公開)で、脱獄し姿を変えながら逃走する死刑囚役を演じた横浜流星(28)が受賞。昨年に引き続き2年連続の主演男優賞受賞で、2022年の助演男優賞から3年連続の受賞は49回の歴史で初の快挙となった。「正体」は作品賞、助演女優賞(吉岡里帆)と合わせて3冠。横浜は、「同志」と表現する藤井監督と二人三脚でつかんだ栄光に万感の思いを口にした。表彰式は12月中旬に都内で行われる。 【画像】「報知映画賞」受賞者一覧! 史上初の3年連続受賞、役所広司以来27年ぶりとなる2年連続の主演男優賞。記録ずくめの快挙となったが、横浜が一番胸を熱くしたのは、作品賞も含めての受賞だったことだ。「いろんな感情が込み上げてくるというか…。どの作品も全力を注いでいますけど、この作品においては、より思いが強い。(構想から)4年かけて完成させた作品。(公開前のため試写などで)見てくださった方の心に届いたことが幸せです」 吉報を受けた当日は、たまたま藤井監督と会う予定があった。「2人でハグをして『やったね』と。大きくは公言していなかったけど、自分らの中でのひとつの目標として、結果を残すっていうのがあったんですね。それがひとつ叶(かな)った瞬間でした」 10歳年上の藤井監督を横浜は「同志」と形容する。「19歳で、お互い何者でもない時に出会い、そこからともに作品を作って…」。初めて仕事をともにした「青の帰り道」(2018年公開)は、不測の事態で撮影が中断し、撮り直しになった。「作品が公開できることって当たり前じゃないんだ、と思い知らされましたし、そこを経て、ともに力を付け合っての今は、ホームのような感覚。もうお互い言葉数も少なくなってきて、不思議な関係性です」と表現する。 「正体」で演じた鏑木は、姿を変え日本各地に潜伏する。ある時は泥だらけの作業員、ある時は茶髪のフリーライター。ある時は優しげな介護職員…。多くの顔を使い分けながら、ある信念のために逃亡を続ける。「正体を隠してはいるけれど、別人格ではない。ひとりの人間としてちゃんといることが大事だったし、難しいところでもありました。(判決当時は)少年死刑囚で、20代の彼が知恵を振り絞って考えた容姿。監督や衣装部、メイク部とも相談してリアリティーがあるところに落とし込めた」 生身でのアクションシーンで感じた物理的な痛みも、鏑木を“生きる”うえで支えのひとつになった。「自分は器用じゃないんです。普通の人よりも人生経験も豊富じゃない。だからこそ、自分ができることといえば自分を極力排除して、役としていることだけをずっと考えている」と愚直に話す。 劇中で象徴的に描かれる「信じること」にちなみ、「横浜さん自身が信じているものはなんですか」と聞いた。「『作品は残るもので、誰かの心に届くもの』だということですかね。そう信じて、そして自分のことも信じて、毎回心や体を削っている。そして日本映画もしっかりと世界に届けられると信じています」。スクリーンを通して、日本中の、世界中の人の心を震わすことができると信じている。(宮路 美穂) ◆正体 凶悪殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けた鏑木(横浜流星)は脱獄に成功。変装し正体を隠しながら逃走を続ける鏑木は、日本中の話題の的となる。刑事の又貫(山田孝之)は、鏑木に接触した人々を取り調べるが、まるで別人のような人物像が浮かび上がる。鏑木の目的とは―。 ◆横浜 流星(よこはま・りゅうせい)1996年9月16日、神奈川県出身。28歳。雑誌モデルを経て、2011年に「仮面ライダーフォーゼ」でドラマ初出演。14~15年の「烈車戦隊トッキュウジャー」で注目を集める。19年のTBS系ドラマ「初めて恋をした日に読む話」で一躍知名度を高めた。12月9日配信のABEMA連続ドラマ「わかっていても the shapes of love」、来年1月スタートのNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」に主演。 ▼主演男優賞 選考経過 池松壮亮を支持する声が上がるも、1回目投票で横浜が圧勝。「一挙手一投足が世界を支配する。5つの顔を演じ切った。なんという俳優」(見城)、「変幻自在な演技力を改めて認識した。今年は他を圧倒している」(松本) ◆選考委員 荒木久文(映画評論家)、木村直子(読売新聞文化部映画担当)、見城徹(株式会社幻冬舎代表取締役社長)、藤田晋(株式会社サイバーエージェント代表取締役)、松本志のぶ(フリーアナウンサー)、YOU(タレント)、LiLiCo(映画コメンテーター)、渡辺祥子(映画評論家)の各氏(五十音順)と報知新聞映画担当。
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