宮崎は人も餃子もアツい! 神宮球場で新グルメ店をオープンさせた野球人の郷土愛
それぞれの朝は、それぞれの物語を連れてやってきます。
東京ヤクルトスワローズの本拠地・明治神宮野球場。 神宮球場の良さといえば、あの開放感! ナイターで飲む生ビールって最高ですよね。 イニングが進むと、小腹が空いてきます。席を立って売店に行ってみると、なんと、『神宮球場グルメ』が大変な盛り上がりなんです! 内野エリア、外野エリア、球場外周エリアに、いくつもの店舗が並び、“選手グルメパネル”があちこちに出て、お祭りの屋台の雰囲気です。
神宮球場のスタンドの下にある通路は、レトロな空気が漂っていて、「何を食べようかな」と、そぞろ歩くのも楽しいんです。 ちょうどバックスクリーンの下あたりで、何やら元気な声が聞こえてきます。 『餃子! 餃子! 宮崎餃子は、いかがですか!』 『神宮球場で、餃子が食べられるお店は、ここだけですよ!』 『新店舗! 宮崎餃子はいかがですか!』 お腹から響く元気な声に誘われて、お客さんが、次々と餃子と生ビールを買っていきます。 日に焼けて、まるで“応援団長”のようなこの男性は……今年3月、神宮球場にオープンした『宮崎餃子専門店 おざわ』の店主、小澤拓郎さんです。元気なのは、ワケがありました!
宮崎県高鍋町出身の小澤拓郎さん(42)。実家は、名の通った仕出し屋さんを営んでいます。 三兄弟の真ん中で、兄弟揃って野球が大好き! 三人とも高鍋高校に進み野球に明け暮れます。長男は甲子園に出場しますが、次男の拓郎さんは甲子園の夢は叶わず、東京に出て、国士舘大学に入学、今度は神宮球場を目指します。東都リーグは「戦国東都」と言われるほど過酷なリーグで、拓郎さんが野球部に所属した4年間、一部に上がれず、神宮球場でのプレイは叶いませんでした。 大学を卒業すると、食品卸会社に就職しますが、「今の自分があるのは、宮崎のおかげ。ふるさとに恩返しをしたい」と、料理店で修業したあと、2014年、東京・恵比寿に『宮崎料理 てにゃわん』を開きます。 「てにゃわん」とは、宮崎弁で「手に負えない」という意味。拓郎さんは、幼いころから手に負えない腕白で、周りから「てにゃわん」と呼ばれていました。それを店名にしたそうです。 「家賃が高い恵比寿で店を開くのは無茶じゃないか」と言われましたが、心のこもった美味しい料理を出せば、きっとお客さんは来てくれるはず……と言うのも、子どもの頃から、仕出し弁当の仕込みや配達を手伝っていた拓郎さんは、地元の人から「拓ちゃん、美味しかったよ」と声をかけられたことが、ずっと心に残っていたんですね。選び抜かれた食材を使い、一流の料理人を雇い、自分はお客さんを もてなす“接客”に徹することで、『てにゃわん』は人気店となり、いまでは、恵比寿に2軒のお店を経営しています。 「ただコロナの時は参りましたね。スタッフを切るか、店を閉じるか、頭を抱えました。そんな時、『大丈夫か』と、宮崎出身のお客さんが足を運んでくれたり、テイクアウトしてくれたり、東京に出てきて感じるのは、人と人のつながりを大事にする宮崎人の温かさでしたね」