クリスマスイブは「心筋梗塞」リスク急増 研究で判明、前兆となる症状・予防法とは【医師解説】
スウェーデンのルンド大学スコーネ大学病院のMoman A. Mohammadらの研究グループは、特定の時間帯や祝日、スポーツイベントと心筋梗塞の発症リスクの関連性についての研究結果を発表しました。 【イラスト解説】「心筋梗塞」を予防する可能性の高い“3つの食べ物” この内容について中路医師に伺いました。
研究グループが発表した内容とは?
編集部: ルンド大学スコーネ大学病院のMoman A. Mohammadらの研究グループが発表した研究内容について教えてください。 中路先生: 今回紹介する研究報告は、ルンド大学スコーネ大学病院のMoman A. Mohammadらの研究グループによるもので、その成果は学術誌「British Medical Journal」に掲載されています。 1998年~2013年の間にSWEDEHEARTというスウェーデンの心疾患の大規模データベースに記録された28万3014件の心筋梗塞を対象として、特定の時間帯や祝日、スポーツイベントと心筋梗塞の発症リスクの関連性を調査しました。具体的にはクリスマスや新年、キリスト教の祝日であるイースター(復活祭)、夏季の祝日、さらにFIFAワールドカップやUEFAヨーロッパ選手権、オリンピックといったスポーツイベントの開催期間とその前後の比較、曜日、時間帯を調べました。 研究の結果、心筋梗塞のリスクはクリスマスや夏季の祝日で高まることがわかりました。特にクリスマスイブは、発症リスクが37%増加しており、最も危険な日であることが示されています。一方、キリスト教の祝日であるイースター(復活祭)やスポーツイベント期間中のリスクの増加はみられなかったとのことです。また、早朝や月曜日も心筋梗塞の発症リスクが増加傾向にあることや、75歳以上の高齢者、糖尿病や冠動脈疾患の既往歴がある患者はリスク増加がより顕著とのことでした。
心筋梗塞とは?
編集部: 今回の研究テーマになった心筋梗塞の初期症状や前触れについて教えてください。 中路先生: 心筋梗塞は、突然の強い胸の痛みや圧迫感を伴い、致死率約40%の非常に怖い病気です。主な症状は、胸の中央部や胸全体の締め付けられるような強い痛みや圧迫感です。狭心症と似ていますが、安静にしても症状が治まらないことが特徴です。また、心筋梗塞に伴い肩や腕、首、歯などに痛みが広がることもあります。そのほかに、男性では冷や汗を伴う、女性では呼吸困難感や吐き気がみられる場合があります。ただし、高齢者や糖尿病患者は、はっきりとした症状が表れないこともあるため、注意が必要です。心筋梗塞は治療が遅れると状態が悪化していくので、症状がみられた場合は迷わず救急車を呼び、迅速な対応につなげることが重要です。 心筋梗塞を発症した人の約半数では、「不安定狭心症」という前兆となる症状がみられます。具体的には、胸の痛みや胸部圧迫感だけでなく、胸やけ・腕・肩・歯・あごの痛みなど、心臓とは関係ない部位に症状が出ることもあります。また、これらの症状は数分程度で治まるため、見落としてしまうことが多いようです。心筋梗塞を発症する前の前触れの時点で異常に気づき、適切な治療を受ければ、心筋梗塞の発症を防ぐことができます。