朝ドラ「虎に翼」ヒットの「はて?」伊藤沙莉が演じる女性法曹の開拓者、ジェンダー不平等社会の“今”
NHK朝の連続テレビ小説「虎に翼」が好調なスタートを切っている。伊藤沙莉がヒロインを演じている、モデルは日本初の女性判事であり、男女平等社会や少年犯罪に対する政府の政策にもかかわった三淵嘉子である。 脚本は吉田恵里香。三淵に関するさまざまな資料や雑誌のインタビューなどを溶け合わせて、最良のフィクションを作り上げた。 女性の成長を描く朝ドラの定番でありながら、週ごとのタイトルに「?」がつき、それに加えて、寅子役の伊藤沙莉がドラマのなかで「はて?」とつぶやいて考える。「はて?」はいまや流行語になりそうである。 寅子が「はて?」という言葉を吐くときは、女性を差別する発言にあったときばかりではない。さりげない日常のなかで、ふと疑問を感じたときである。
ドラマを支える多様な学友たち
日本の司法界にあって、戦前から弁護士にいどみ、戦後は判事、各地の家庭裁判所、政府の審議会のなかで、モデルが新しい動きをみせて男女平等社会の実現に尽くした。そこには、これまで常識となっていたことに対する「はて?」があった。彼女の人生については『三淵嘉子 日本法曹界に女性活躍の道を拓いた「トラママ」』(青山誠、角川文庫)を参照にした。 ドラマに戻る。主人公の猪爪寅子(いのつめ・ともこ、伊藤沙莉)は、銀行家の父・直言(なおこと、岡部たかし)と母・はる(石田ゆり子)の恵まれた家庭に育った。高等女子学校に通ったあと、進路に迷ったとき法律家を目指すことにした。それまで男だけだった弁護士の道が法改正によって女にも開かれることを知ったからだった。 ちなみに、この試験に合格しても女は判事と検事には戦後までなれなかった。 猪爪家の書生の佐田優三(仲野大賀)も働きながら夜学に通って、司法界に入るための高等試験(現在の司法試験)を目指していた。
寅子は、女性にも弁護士への道が開かれる可能性が出てきたことから、法律専門の女子部を設立した明律大学に入学した。第6週(5月6日~)に至って、寅子と学友の女学生たちの人生に岐路が訪れる。しかも、高等試験が重なってくる。 脚本家の吉田恵里香が創造した多様な学友たちと、そのキャスティングがドラマの快調を支えていると思う。華族の桜川男爵の娘である涼子役に美貌の演技派の桜井ユキ、弁護士の妻にして子どもいる大庭梅子役に個性派の平岩紙。朝鮮からの留学生の崔香淑(チェ・ヒャンスク)にハ・ヨンス。カフェのバーテンを勤める男装の山田よね役に土居志央梨。